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俺の涼風 ぼくと涼風
6. 二人で一人(1)
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アタシは一人で間宮でも行ってクリームあんみつでも食べてくるかー。ニヤニヤ」

 これは絶対に何かおかしな勘違いをしている……何か言い返そうと思ったのだが、やはり何も文句が思いつかない。いやらしい笑みを浮かべた摩耶姉ちゃんは、『んじゃごゆっくりー』と好き勝手なことを言い、一人でてくてくと姿を消した。私の前から去っていく摩耶姉ちゃんの背中は、不思議と上機嫌に見えた。

 私はというと、そのままゆきおがいる宿舎に向かうことにした。甘いモノが好きなゆきおのために、間宮か酒保でお菓子でも買っていこうかと思ったんだけど、今はゆきお以外の誰にも会いたくない気分だった。ゆきおには悪いけど、今日はおみやげはなしにしよう。

 さっきの執務室の話のためか、幾分重い足を引きずりながら、私は宿舎に到着する。いたるところに段ボール箱が置かれた一階を通り過ぎ、階段で三階まで向かう。エレベーターを使おうと思ったのだが、私が到着した時、エレベーターは三階の表示になっていた。待つよりは階段を使ったほうが、到着は早い。

 てくてくと階段を上がり、三階に到着する。一階と同じく、三階にも物が増えてきた。廊下に、観葉植物や3人掛けの腰掛けなんかも置かれている。私はこの建物のことを勝手に『宿舎』だと思っていたが、どうも宿舎ではないような気がする。

「あら。こんにちは」
「あ、こ、こんにちは」
「この鎮守府の艦娘さんかな?」
「うん」
「これからよろしくおねがいしますね」

 ややピンクがかった白い服に、同じく薄いピンク色の帽子を被った、一人のきれいな女の人とすれ違った。テレビで見たことがある服装だ。確か看護師さんとかいう人だったか。なんでそんな人がこの鎮守府にいるのかよく分からなかったが、男の艦娘になるゆきおの、身体のことを調べる為にいるんだと、すぐに思いついた。気にせず私は、ゆきおの部屋のドアの前まで向かい、コンコンとドアをノックする。

『はーい』

 いつもの優しいゆきおの声が、ドアの向こうから聞こえてきた。なんだかそれだけで、さきほど全身にまとわりついた恐怖が、ほんの少しだが、消えていくことを感じた。

「ゆきおー。あたいだ」
「え? 涼風?」
「うん」
「入っていいよ。どうぞー」

 私がここに来たのが意外だったのか……多少戸惑いの色を見せるゆきおの許可に従い、私は部屋のドアを開く。ゆきおはいつものように、真っ白い部屋着の上からクリーム色のカーディガンを羽織って、ベッドの上で本を読んでいた。

「よっ。ゆきおー」
「うん」

 いつものように、ベッドの横に置いてあるソファに腰掛ける私。ゆきおはふわっと柔らかい微笑みを私に向けた後、手元の本に視線を戻した。ゆきおが読んでいる本の内容が気になった私は立ち上がり、ゆきおが開いている
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