6. 二人で一人(1)
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かな目で私を見つめていた。あの日以降、私に対して怒りと嫌悪を躊躇なくぶつけてくる榛名姉ちゃん。今のこの榛名姉ちゃんの私に対する眼差しは、姉ちゃんの怒りを如実にあらわしているようだった。
私の様子を見かねた提督は、ふぅっとため息を付いた後、最後に
「本当に出撃するかどうか、明日もう一度涼風に聞く。無理なら無理で構わない。今日はこれで解散とする」
と言って、私たちを執務室から開放してくれた。
「……提督」
「ん?」
「ごめんよ……」
「いいよ。でも、お前を苦しめたいから第一艦隊に編入するって決めたんじゃないことは、理解してくれるか」
「うん……」
執務室を出るときに、私は提督を振り返ったのだが……その時の提督の背中は、なんだか寂しそうに、小さく見えた気がした。
その後執務室の前で榛名姉ちゃんは、『出るにしろ出ないにしろ、迷惑だけはかけないで下さい』と吐き捨てたあと、ツンツンと尖った背中を私たちに向け、カツカツと足早に自分の部屋に戻っていった。
「っんだよあいつ……」
「……」
去っていく榛名姉ちゃんの背中に向けて、摩耶姉ちゃんが小さく悪態をつく。未だ身体の震えが止まらない私の肩を抱き、摩耶姉ちゃんは私の左の二の腕をさすってくれた。
「大丈夫か?」
「う……うん……」
心配そうに覗きこむ摩耶姉ちゃんの顔を見てられなくて、私は顔をそむけ、そして痩せ我慢で大丈夫だと答えた。でも摩耶姉ちゃんがそれで納得してくれないのは、姉ちゃんの顔を見れば分かる。
「……なー涼風」
「……ん?」
「お前さ。今日このあと、何か予定はあるか?」
摩耶姉ちゃんは、私が『予定はない』といえば、きっと私と一緒にいてくれるつもりなのだろう。摩耶姉ちゃんは、私が辛い時は、何も言わず、ずっと一緒にいてくれる。言葉は乱暴だけど、摩耶姉ちゃんはとても優しい。
でも。
『すずかぜー』
なぜだか今、ゆきおの優しく柔らかい声を聞きたかった。あの、生活感がないけれど、とても優しく、柔らかな空間に行って、友達のゆきおと、とりとめのない話をしたかった。
「ごめん摩耶姉ちゃん」
「んー?」
「あたい、今日さ。約束してるんだ」
「誰と?」
当然の質問が飛ぶ。本当は約束なんかしてないんだけど……
「えと……ゆきおと」
「ふーん」
適当にごまかせるほどの余裕なんかなくて、ついゆきおの名前を口走ってしまったが……それが摩耶姉ちゃんの心の琴線に触れたようだ。上を向いてしばらく『んー?』とうなった後、摩耶姉ちゃんは急にニパッと笑い、私の肩をガシッと抱いた。
「そっかー。最近のお前、雪緒と仲がいいもんなー。ニヤニヤ」
「ん?」
「そっかー。約束があるんじゃ仕方ない。
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