6. 二人で一人(1)
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提督からの予想外の一言に対し、私は身体の震えを止められなくなった。
「提督。あんた、自分が涼風に何を言ってるのか、わかってんのか?」
「分かってる。酷なことだとは思うが……」
私の右隣に立つ摩耶姉ちゃんが、私たちの正面にいる提督に、そう噛み付いていた。真剣な表情で私たちを見つめる提督の机には、小さなテレビモニターが置いてある。
「……榛名も反対します。涼風さんは、現状ではまったく戦力になりません」
左隣に立つ榛名姉ちゃんは、言い淀むことなく、きっぱりとこう言い放つ。恐怖で言うことを聞かない顔をなんとか持ち上げ、こっそり榛名姉ちゃんの顔色を伺った。榛名姉ちゃんはとても冷たい眼差しで、私に視線を向けることなく、まっすぐに提督の方を見ていた。
話は昼食後に遡る。今日はオフの私達は、食事が終わった後、館内放送で執務室に呼び出しを受けた。
「? なんだ?」
「榛名もですか……」
ご飯を食べたらゆきおの部屋に遊びに行こうと思っていた私だったが、提督からの命令なら致し方なし。榛名姉ちゃんも一緒に、険悪な空気を我慢しながら、私たちは執務室へと向かう。
「……」
「……うう」
「……」
3人で廊下を歩いている時、私は時々、ご機嫌を伺うように、榛名姉ちゃんの横顔を見た。昔なら、私が横顔を覗きこむ度に、私に『ん? どうかしました?』と優しい笑顔を向けてくれていた榛名姉ちゃんだったのだが、今では……
「……涼風さん」
「……?」
「そんな風に怯えながら、こっち見ないで下さい」
「ご、ごめん……」
「……気分悪いです」
「……」
私の方を一切見ずに、こうやって辛辣な言葉を浴びせてくるだけだ。私は、いつか榛名姉ちゃんと、昔のように笑顔で仲良く一緒にお話したいと思ってるけど、そんな日が本当に来るのか、とても不安になってくる。
一方、そんな刺々しい空気の中、摩耶姉ちゃんはというと……
「ふわぁー……昼飯食った後って眠いなぁ……」
「……摩耶さんも、もうちょっとしっかりして下さい」
「っせーなー……腹いっぱいで眠いのは仕方ねーだろーが……」
空気を読んでないのか、はたまた読んだ上でのあえてなのか、緊張感のかけらも見せておらず、涙目であくびをしながら、ぱんぱんに膨れたお腹をさすっていた。
そうして険悪な空気に耐えながら、私達3人は執務室に到着する。待ち構えていた提督は、私たちに対し、開口一番、こんなことを言った。
「明日の出撃だが、涼風を含むお前たち3人に出撃してもらおうと思っている」
「……え?」
私は最初、耳を疑った。私は今、出撃することが出来ない。確かにこの鎮守府所属の駆逐艦の中でも、私は比較的練度が高い。タイマン勝負なら、誰が相手で
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