第一章 天下統一編
第二十三話 降伏
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の旗を上げました」
藤林正保が俺に声をかけてきた。俺が視線を天ヶ岳砦内を見回すと小出の家紋が入った旗が彼方此方に掲げられていた。
「ご苦労」
これで北条氏規は天ヶ岳砦が落ちたと理解するだろう。北条氏規に考える暇を与えるつもりはない。
「江川英吉はいるか」
「下で待っております」
俺は櫓を下りることにした。櫓を下りると江川英吉が片膝を折り待っていた。
「江川英吉、北条美濃守殿に降伏の書状を届けて欲しい」
俺は具足の脇から一通の油紙に包まれた書状を取り出し、江川英吉に差し出した。彼はすり足で進み出ると書状を受け取り懐にしまい込んだ。
「小出相模守様、必ずや吉報をお届けいたします」
「頼んだぞ」
俺が江川英吉を見送って半刻(一時間)、そろそろ豊臣軍にも韮山城の様子の変化に気づいているころだろう。北条氏規は未だ降伏しないのか。俺の軍単独で城を落とすからこそ乱取りを防ぐことが出来るんだ。それを読み取れない北条氏規じゃない。
俺は焦り深く深呼吸した。
「殿、如何なさいました」
「眠たいだけだ」
俺は笑みを浮かべた。
「無理をなされますな」
曽根昌世は俺を見透かすような目で見ながら言った。
「気をつける。城に動きはあったか?」
「いいえ、ありません」
「北条氏規はどう動くだろうか?」
「この状況で選べる手はないでしょう。殿の助け船を蹴れば、韮山に布陣する豊臣軍に嬲り殺しにされるだけ。意地を見せ戦う道を選ぶというならば叩き潰すだけのこと」
曽根昌世は真剣な表情で俺のことを見た。
そうだな。北条氏規が徹底抗戦を選ぶならば力攻めをする以外にない。
だが、北条氏規を拘束する必要が俺にはある。
福島正則と蜂須賀家政を呼ぶか。俺の手勢だけで本丸を落とすことは難しい。
「殿!」
俺が援軍を福島正則と蜂須賀家政に要請するか思案していると、物見の家臣が俺のところに慌てて走ってきた。
「何か城に変化があったのか?」
「敵将・北条美濃守が降伏いたしました」
俺はつい立ち上がってしまった。
「北条美濃守は江川英吉に伴われ、この砦に向かっております」
北条氏規が自ら城を出てくるとは思わなかった。俺は脱力し床几に腰掛けた。
「藤林長門守、北条美濃守殿を丁重にお招きしろ。失礼のないようにな」
俺が藤林正保に頼むと彼は「かしこまりました」と返事、北条氏規を迎えに行った。彼の後ろ姿を見送っていると曽根昌世が俺に声をかける。
「殿、これで腹を切らずに済みましたな」
曽根昌世は笑いながら軽口を叩いた。
「そうだな。これも家臣達が頑張ってくれたおかげだ」
「家臣達が良い働きをしたと思わ
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