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俺の涼風 ぼくと涼風
5. 海に出たことのない艦娘(2)
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「行こうぜ! ゆきお!!」

 うつむき、悩む素振りを見せたゆきお。でもやがて右手をギュッと握りしめ、山吹色に輝く眼差しで私を見つめ返し、そして力強く頷いた。

「……うんっ!」

 そこからの私たちの行動は早かった。二人で手をつなぎ、この新宿舎をこっそりと脱出した後は、駆け足で入渠施設の前を通り過ぎ……

「すずかぜっ! 走らないで!! もっとゆっくり!!」
「てやんでぃっ! のんびりしてたら日が暮れちまうぜッ!!」

 私達の宿舎の前を、伝説の傭兵よろしく物陰に隠れながらこそこそと移動し……ダンボールで身を隠しながら、執務室前の中庭を抜け……

「と、父さんに見つからないかな……」
「いけるいける! ダンボール箱被ってるんだから!!」

 いつも何気なく移動する鎮守府の大冒険の末、出撃ドックに無事到着した。

「よかった……誰にも見つからなかった……」
「あたぼうよ! あたいを甘く見ちゃダメだぜ!!」

 ちゃぷちゃぷと小さく波打つ、水面に気を取られるゆきおをその場で待たせ、私は自分の艤装の主機を足に装着した。水面に立ち、ゆきおのそばまで移動して、ゆきおのことをおんぶする。

「す、涼風……ごめん……重くない?」
「大丈夫に決まってんだろ! 白露型はつえーんだっ!!」

 実際、身体の小さなゆきおの体重は、とても軽い。日頃遠征で魚雷発射管を背負ってる私には、ともするとそっちの方を重く感じるほどだった。

「ゆきお、あたいにしっかりつかまれよ!」
「う、うん……」

 ゆきおの温かな両腕が、私の肩を優しく掴んだ。これじゃ吹き飛ばされる。

「ダメだゆきお! ちゃんとあたいの首に腕を回せって!!」
「お、おうっ!」

 今度は、ゆきおは私の肩に抱きつき、しがみつく。ゆきおの左手が私の右肩をつかみ、右手は私の左肩をしっかりと掴んでいた。両肩に、ゆきおの手のぬくもりが、じんわりと伝わった。

「よーし! いくぞゆきおー!!」
「お、おーっ!」

 主機の回転数を限界まで上げる。ゴゴゴゴという主機の音が出撃口に鳴り響いた。私とゆきおの後ろで、水しぶきが上がる。

「つめたっ」
「大丈夫か?」
「大丈夫。顔にちょっとかかっただけ!」
「上等だ……ッ!! 全速ぜんしーん……」

 私の肌に触れるゆきおの両手に、力が篭もる。私は主機のギアを切り替え、溜めに溜めた加速力を一気に開放した。

「よぉぉおおおそろぉぉぉおおおお!!!」
「ふぎゃぁぁぁああああアアアアッ!!?」

 途端にドカンと音が鳴り、ゆきおをおぶった私の身体は、猛スピードで前方に跳ね飛ばされる。これだけすさまじいロケットスタートをきめたのは久しぶりだ。

「涼風! スピード!! スピード落として!
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