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俺の涼風 ぼくと涼風
5. 海に出たことのない艦娘(2)
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ゆきおも同じようで、私の隣で同じく頭をぐわしぐわしと撫でられているゆきおもまた、私と同じように悲鳴を上げ、涙目になっていた。

 ひとしきり私たちの頭に折檻を加えた摩耶姉ちゃんの手が、ピタリと止まる。そしてその手が、今度は傷みきった私たちの頭の上に、優しくポンと乗っかった。

「……心配したんだぞ」
「……」
「摩耶姉ちゃん……」
「雪緒、お前もだ。提……父ちゃんに、心配かけるな」
「……ごめん」
「……ごめんなさい、摩耶姉ちゃん」

 顔を上げ、私は摩耶姉ちゃんの顔を伺う。摩耶姉ちゃんは、もう怒ってはなかった。でも笑ってもなく、なんだかとてもつらそうな……泣き出しそうな顔をしていた。

「……二人共、晩飯前に提督に謝ってこい」
「うん」
「よし、行け」

 摩耶姉ちゃんの両手が、私たちの頭から離れた。と同時に摩耶姉ちゃんは私たちの肩を抱き、出入り口まで誘導してくれ、背中をポンと押してくれた。出入り口は開いてる。執務室までの道には、誰もいない。

「涼風」
「うん」

 私とゆきおは、誰もいない執務室までの廊下を、二人で、手を繋いで歩いていった。不思議と誰ともすれ違わず、私たちは二人だけで、廊下をトコトコと歩く。さっきまでいた大海原とは全然違う、とても狭い廊下。宿舎の外やドアの向こうの部屋からは、みんなの喧騒や話し声が聞こえるけれど、でもこの廊下だけは、人が誰もいなくて、とても静かだった。

 執務室の前まで来た。ドアノブが回転するガチャリという音がなり、タイミング良くドアが開いた。

「では提督、失礼します」

 中から出てきたのは榛名姉ちゃん。榛名姉ちゃんは入り口から出てきた後、私の姿を一瞥して、再び執務室を振り返り、敬礼して去っていった。

「涼風、今のキレイな人は?」
「……榛名姉ちゃん。昔は、あたいと榛名姉ちゃんは、仲よかったんだ……」

 背を向けて、私達に表情を見せず去っていく榛名姉ちゃんの背中を二人で見送ったあと、私たちは執務室に入る。

「提督、入るぜー」
「父さん。入るよ」

 後ろめたさが、私たち二人に襲いかかる。おかげで、執務室の奥にいる提督の、顔を見ることが出来ない。

「ん。二人とも入れ」

 提督の静かな声にそう促され、私たちは俯いたまま、手を繋いで執務室に入った。

「ドアを閉めろ」

 とても静かな……ともすると感情がこもってないようにも聞こえる、提督の静かで冷ややかな声に従い、私は静かにドアを閉じた。執務室が、外界から閉ざされた。今、執務室の中で、私とゆきおの味方はいない。

「あ、あの……提督……」
「父さん……」

 喉が震える。胸の奥底から絞り出した声が、震える喉を通るおかげで、ひ弱でなよなよしい声になってしまう。そ
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