暁 〜小説投稿サイト〜
俺の涼風 ぼくと涼風
5. 海に出たことのない艦娘(2)
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たーゆきおー?」
「連れてきてくれてありがとう涼風」
「てやんでぃ。友達のためだ。ったりめーだぜ」
「うん。……ありがとう」

 帰路を急ぐ私たちの周囲で、楽しそうにジャンプしていたイルカたちと、距離が離れ始めた。ある程度離れたところで、私たちは、この散歩で出会った友達たちにお別れの挨拶を済ませ、家路を急ぐ。

「見送ってくれてありがとう! また会おうね!! また来るからね!!」

 離れていくイルカたちの群れに、そう叫びながら必死に右手を振っているゆきおの両目は、なんだか妙にキラキラと輝いているように見えた。



 鎮守府の出撃ドックに戻った時、そこでは腕組みをし、私達二人を睨みつける、摩耶姉ちゃんが一人で仁王立ちしていた。真っ赤な顔をしてるのに、目からはなんだか青い炎が出ているような……怒り心頭の人だけが見せる、裂帛の気迫のようなオーラが見える。二の腕あたりをチョンとつつけば、たちまち大爆発してしまいそうな、そんな感じの摩耶姉ちゃんの身体は、自身の怒りを押し殺すように、プルプルと震えていた。

「うう……摩耶姉ちゃん……」
「うう……摩耶さん……」
「お前ら……ッ!」

 ゆきおを私の背中からドックの床へと下ろし、私は海面から上がって、ゆきおと共に摩耶姉ちゃんのそばまでトボトボと歩く。本当は近づきたくないし逃げ出したいけど、そうも言っていられない。

 それはゆきおも同じようで、さっきから冷や汗だらだらで顔は青ざめている。ひくひくと動く口元は、ほんの少しだけ口角が上がって、『エヘ……エヘヘ』と笑っているようにも見えた。

「……あたしがなんでこんなに怒ってるか、分かるか?」

 自分のそばまでトボトボと歩いてきた私たちに、摩耶姉ちゃんがかけた第一声がこれだ。

「無断で外出したから……?」
「違うっ!!」

 私の答えを即決で、そして全力で否定する摩耶姉ちゃん。ゆきおも『命令じゃないのに、軍の持ち物の艤装を勝手に使ったから?』と答え、『それも違うっ!!』と全力で否定されていた。

「うう……じゃあなんでこんなに……」
「……わかんねーか?」
「分からない……です……うう……」

 答えが分からず、俯いてしどろもどろになる私たちの頭を、摩耶姉ちゃんの、その怒りがこもった大きな両手が、がっしと掴んだ。その後、摩耶姉ちゃんの両手は私たちの頭をグワシグワシと乱暴に撫で付け、私たちの髪を乱暴に乱した。

「いだだだだた!? ま、摩耶姉ちゃん!! いだいいだい!!!」
「いだいでず!! 摩耶さんい゛だい゛でずぅぅぅうヴヴヴヴ!!?」

 摩耶姉ちゃんの、乱暴で力強いナデナデはとても痛く、だまって続けられていると、ひょっとして頭の中身がはみでてくるんじゃないかと思うぐらいに痛い。それは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ