5. 海に出たことのない艦娘(2)
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たゆきおが、こんなにはしゃいでる。このまま帰るのもなんだか忍びない……。
「え……えーと、摩耶姉ちゃん」
『あン!?』
うう……怖い……怖いけど……
「えーと……もうちょっと、ここにいて……いいかな」
言ってしまった……後悔は、いつも口走ったあとで心を駆け巡る。
『うるせー!! 黙ってさっさと帰ってこいッ!!!』
今まで聞いた事無いような、摩耶姉ちゃん史上最大級の雷が落ちた後、私の耳に『ガチャン!!!』という、通信が切られた轟音が鳴り響いた。あまりの音の大きさに、私の耳にキーンという耳鳴りが襲いかかった。あんなに怒った摩耶姉ちゃん、随分久しぶりだ……。
「? 涼風?」
さっきまではしゃぎっぱなしだったゆきおが、私に心配そうな声をかけてきた。気がつくと、イルカの群れが背びれを海面から出して、私たちの周囲を、楽しそうにぐるぐると回っている。
仕方ない……ここは素直にゆきおに本当のことを話して、鎮守府に帰ることにしよう。そう決意し、私は事の次第をゆきおに説明することにした。
「うう……」
「どうしたの?」
「ゆきおー。あたいたちが黙って出てきたの、怒られた……」
「そっか……」
私たち二人の間にほんの数秒、気まずい沈黙が流れる。うつむく私と、残念そうに、名残惜しそうに、水平線の彼方の彼方をじっと眺めるゆきお。
私の足元の水面から、イルカが一匹、顔を出した。目が水面の向こう側だから、イルカの表情は見えなかったが、『キュウっ』と意外と気の抜けた声が、パカッと開いたイルカの口から聞こえてくる。
私は、そんなイルカの口をジッと見つめた。遠くを見つめていたゆきおも足元のイルカに気が付き、うつむいてそのイルカを見つめる。私とゆきおに見つめられたイルカは気まずくなったのか、再び『キュウ……』と情けない声を上げ、そのまま水面のはるか下へと消えていった。
その様子を眺めた後、互いに顔を見合わせた私達。しばらく見つめ合った後、ゆきおの顔が、ふわっと微笑んだ。
「……帰ろっか、涼風」
つられて私も、フフッと笑いがこぼれた。
「だな。帰ろっか、ゆきお」
「うん。でももう、ロケットスタートはやめてね」
「うん。ゆっくり帰ろうぜ」
「うん。二人で、ゆっくり帰ろ」
「うん」
残念だけど……楽しい時間はこれで終わり。私とゆきおの、楽しい散歩は終わりだ。私は、今度は穏やかにゆっくりと主機を回し、この海域を離れ、鎮守府に帰投することにした。
「……涼風」
帰り道の道中。見送りのイルカたちのジャンプを眺めながら、ゆきおが私の耳元で、ポツリと私の名を呼んだ。その時、とても温かいゆきおの両手が、私の身体にギュッとしがみついた。
「んー? どし
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