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俺の涼風 ぼくと涼風
5. 海に出たことのない艦娘(2)
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 私のウソを真に受けたゆきおは、そう言って私に対し、ニッコリと微笑みかけてくれた。その一切の疑念のない、私の言葉を信じきった笑顔が、私の心にほんの少しだけ、チクッと刺さった。

 『御前崎の向こうは浜松だ!!』と騒ぎ立てるゆきおの声に混じり、私の通信機からの呼び出し音が鳴った。いつも出撃の際には艤装と一緒に通信機も身体に取り付けているが、それを今回も持ってきてしまったようだった。私とゆきおに対し、通信機は『ピーピー!!』とけたたましく鳴り響き、私達に、通信相手の逼迫さを必死に伝えているようにも聞こえた。

「あれ?」
「あ、悪い。通信機持って来ちゃった」
「バレちゃったのかな」
「かもなー」

 もうしばらくゆきおとはしゃいでいたかったけれど、こう執拗に呼び出しをされたら気になって仕方ない。私は回線を開き、通信相手と会話をすることにする。

『涼風か?』
「お、摩耶姉ちゃん」

 相手は摩耶姉ちゃんだった。でも、その声には、いつものような朗らかさや気楽さがない。なんだか作戦中のような、逼迫した雰囲気なような気がするけど……気のせいだろう。構わず私は、通信を続ける。

『お前、いまどこにいるんだ?』
「沖に出てるよー」
「涼風!! 鯨だ! 鯨がジャンプした!!」
『ひょっとしてさ。今、雪緒と一緒にいるか?』
「ぉお。よく分かったな摩耶姉ちゃん! 今、ゆきおと一緒に沖から鎮守府眺めてる!!」

 この時、通信機の向こうから、『ひゅおっ』という、摩耶姉ちゃんの雰囲気が変わる音が聞こえた気がした。その瞬間、私の心が異変を感じ、『ヤバい』と警報を鳴らしたが、時すでに遅し。

『バカやろうっ! 今『涼風と雪緒がいないっ』て、鎮守府大騒ぎになってんぞ!!』

 私の鼓膜を、ビリビリと容赦なく攻撃する、摩耶姉ちゃんの怒声を前に、私は思わず肩をすくませ、身を縮こませた。

「ひゃっ!?」
「おわぁあっ!? す、涼風っ!!」

 その拍子に体勢を崩してしまい、私がおんぶしているゆきおもろとも、思わず海面に倒れ伏しそうになってしまう。すんでのところでなんとかこらえ、心配そうに見守るゆきおを尻目に、私は摩耶姉ちゃんとの通信に再び集中した。

「へ? なんで?」
『当たり前だろバカっ! 何の連絡もなくいきなり仲間が二人もいなくなったら、どこの誰でも心配するだろうがッ!!』
「うう……」
『いいからさっさと帰ってこいっ!!』

 うわ……摩耶姉ちゃん、相当怒ってる……。言葉の端々に、摩耶姉ちゃん特有の、いつもの優しさがまったくない……でも……

「ちょ! 涼風ッ!! あっちでイルカもジャンプした!!」
「……」
「来てる!! ジャンプしながらこっちにたくさん来てるよ涼風!!」

 息を切らせ
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