第五章 Over World
ここに、私がいるから
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頭が痛む。
朦朧とする意識が、だんだんと覚醒していく。
身体が痛み、節々が鈍痛を発している。
「・・・ここは・・・」
気付くと、唯子は杭に縛り付けられていた。
もうすでに夜となっており、周囲には村人たちが、松明を掲げて囲んでいる。
「眼を覚ましたぞ!!」
「この悪魔め!!」
狂気の集団と化した村人たちの怨嗟の声に、ビクッと目を閉じ、肩を竦ませてしまう唯子。
チリチリと肌に当たる感触は、決して松明の火の粉だけではないだろう。
(たしか・・・・私は頭を殴られて・・・・)
自分の体を見ると、身体の痛みの原因が分かった。
唯子の身体は、太い一本の杭に、荒縄で縛り付けられている。
足は完全に浮いており、その下には幾つもの薪が並べられていた。
「これよりィ!!この悪魔を、火あぶりに処す!!」
「おぉ!!」
「やってやれ!!」
「皆の仇だ!!!」
村人たちの言葉と共に、バシャバシャと足元に、多くの油がぶちまけられた。
ムワッ、とした嫌なにおいが鼻を突き、唯子がむせて息を詰まらせる。
このままでは焼き殺される。
唯子は必死に体をよじらせて脱出しようとするがしかし、女子一人の力でこの荒縄が切れるはずもない。
脱出は不可能だ。
そして一人の男の松明が、油をたっぷり吸いこんだ薪に近づけられ・・・・
「やめてぇ!!!」
少女の叫びが、それを止めた。
村人が一斉にその声の無視の方へと振り向く。
「な・・・・なんで」
「やめて!!お姉ちゃんを殺さないで!!」
出てきたのは、唯子と共に逃げていたあの少女だ。
目にはたっぷりと涙を浮かべ、家の陰から飛び出してきて唯子の方へと駆け出してきたのだ。
「あの子は!!」
「悪魔に連れ去られた子じゃないか!!」
「ああ、無事でよかった!」
「神父様が守ってくださったんだわ、きっと!!」
その子の姿を見て、村人が一斉に向かって行く。
唯子のことなど、今この一瞬は頭から忘れ去られていた。
「あの子一人・・・・?なんで今になって・・・・」
「ねーちゃん」
「!?」
あまりにできすぎた状況に混乱していると、唯子に声が掛けられた。
それは、あの子と一緒に教会から逃げた少年の物だ。
もう一人も「大丈夫?」と小さな声で確認してくる。
「君たち・・・・」
「今あいつが気を引いてるからな、今の内に助ける!!」
「ちょっと待っててね・・・んしょ・・・・!!」
どこから拾ってきたのか、少年たちが手に持つ小さなナイフなどで荒縄を少しずつ、ほんの少しずつ
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