第五章 Over World
ここに、私がいるから
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
もし今までのそれを否定して、忘れて、無かったことにしてしまったら
もう二度と、自分は――――――
「明日の自分に・・・・顔向けなんてできないじゃない」
そんな自分に、満足できることなどない。
故に
少女は永劫
手に入らぬ幸せを求める哀れな踊り子として
この張りぼての舞台を踊り続けていたのだ。
「お姉ちゃん・・・・」
「・・・違うわ」
「じゃあ・・・・お姉ちゃんは誰なの?」
しがみつく少女が聞く。
だが、彼女はまだ自分の名前を答えられない。
もう自分が、何をすることのできる人間なのかすら思い出せない。
だが、さっきから脳裏にはつらい記憶ばかりが流れ込んでくる。
焼ける街
変貌した思い人
まったく違うものにされた身体
まるで耐えて見せろと言わんばかりの、記憶の濁流。
楽しく、幸せな記憶は刹那に輝く。
苦しく辛い記憶は、久遠に蝕む。
だが、だからこそ。
彼女は忘れない。
この力を手にした理由を。
どうして自分がここにいるのか。
光り輝く光景に至るため、踏破し、打破し、突破してきたその苦難を
悲しみは消えず、避けること能わず
だからこそ、自らを奮い立たせるそれを抱えて人は生きる。
乗り越えてきた自分があるからこそ。
彼女は力を込めて少女を抱きしめる。
その力は――――――――
「勇気を出して。あなたも最初は、世界に希望を持っていたはず」
「希望・・・?」
「私の名前は、今は言えないわ。でもね・・・・・」
そっ、と彼女は少女から離れる。
そして
ブパンッッ!!!
「ヒィッ!?」
「大丈夫」
少女の背後から襲い掛かってきていた、その黒い影を殴り飛ばしていた。
「少し、思い出した」
「お姉ちゃん?」
今はこれ以上思い出せない。
何故これができるのか、一体私は何者なのか。
それは全くわからないが、この拳の握り方は覚えている。
「これは、絶望と戦うための力―――――!!!」
それと戦うには、それを知らねばならない。
その恐ろしさを知ったからこそ、こうして彼女は立ち向かうために拳を握れる――――!!!
一方、少女を取り戻そうとするかの時如く、黒い影がなおも向かってきていた。
それを彼女は拳で掻き消す。
「思い出してあげて・・・・あなたの、大切なお姉ちゃんを・・・なかったことにしないで上げて・・・・!!!」
「わた・
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ