第五章 Over World
ここに、私がいるから
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「忘れて・・・・・」
「うん。それで、最後には幸せな記憶だけになるの。楽しかったことだけを思い出せるの。辛いことなんて、苦しいことなんて、何もない人生があるんだよ?」
「でも・・・・・!!」
「自分の名前も、出てこないのに?」
「な・・・私は!!―――――え・・・・?」
一体いつからだろうか。
彼女はすでに、その名前すらも失っていた。
すべては彼女を「彼女」にするため。
だが、この彼女は肉体の疲弊が早すぎた。
「それはきっと、辛いことだったんだよ」
「私は・・・・」
「自分の名前も、辛いことだったんだよ。お姉ちゃんが気づいていないだけで」
だから一緒にいよう。
最後まで幸せになろう。
全ての記憶を幸福にしよう。
その優しさの中で、終わりを迎えよう。
だが
「ダメ・・・よ」
「どうして・・・・」
「わからない・・・でも、それだけは絶対にダメ!!」
「どうして・・・・ッ!!」
「ダメ!!そんなやり方で、幸せな終わり方は・・・・ダメだ!!」
「どうして!!!!」
「(ガシッ!!)うぐッ!?」
「どうしてみんなそうやってここから逃げようとするの!?いつもいつもお姉ちゃんたちはそう言うの!!ここから出して。元の世界に戻してって!!そんなの、辛いだけなのに!!!」
少女が彼女の首に掴みかかる。
それは万力を以って、彼女の気道を締め付けていく。
「それじゃ・・・・うそだから・・・・・」
「うそ・・・・?」
だが、そんな状態でも彼女は答えた。
絞り出すように、苦しそうに。
少女の力は緩まない。
それでも、彼女は先を進める。
「辛いこととか、苦しいことは、確かに嫌だよ・・・でも、それがないと・・・・・楽しかったことが全部無駄になっちゃうから・・・・・」
「そんなこと・・・ないよ!!!楽しいことは楽しいもの!!優しいものは優しいもの!!嬉しいことは、絶対に嬉しい事だもん!!」
「じゃあなんであなたは満足できてないの!!!?」
涙も出てきて、目を潤ませながら。
その言葉を、全身の筋肉を使ってひねり出した。
ビクッ、と震える少女。
少し拘束が弱まる。
「もし本当に楽しいこととか、そう言うのばっかりにできるなら、あなたはもう満足しているはずでしょう!?」
「それはまだ、本当のお姉ちゃんが見つかってないから!!」
「違う!!それじゃ本当のお姉ちゃんは、いくら探したって見つからない!!!」
ドクン!!!
「みつから・・・・な・・・・・い・・・・?」
「あなたの
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