第五章 Over World
ここに、私がいるから
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「きゃ・・・が・・・・や、やめ・・・・がグゥ・・・・」
少女は悲鳴すら上げられず、少女の物とは思えない音を喉から絞り出して悶絶した。
だが、それでも大人たちはその力を緩めない。
むしろまだ声が出るのか、とさらに力を込めはじめた。
「やめて!!」
「そいつに手を出すなぁ!!!」
それを見て、唯子が叫ぶよりも先に少年たちが飛び出していった。
ずっとずっと、あの教会で一緒に暮らしていた少女が今、危機に瀕しているのだ。飛び出さないなんてことは、ありえなかった。
だが
「このガキども!!ナイフなんかもってやがる!!」
「見ろ!!女の荒縄が少し切れてんぞ!!!」
「こいつらも悪魔だ!!」
「いや、神父様と同じだ!!殺されて、悪魔にすり替えられたんだ!!」
勇敢に、そして無謀にも立ち向かって行ってしまった少年たちは、遠慮容赦のない圧倒的な暴力に包まれた。
向かって行き、カウンター気味に蹴り飛ばされる少年二人。
その一撃だけで、彼らは血を吐き地面に転がる。
一人はすでに瀕死だ。
様子からして、内臓がいくつかつぶれたのかもしれない。
だがもう一人の、体力のある方の少年は立ち上がった。
こちらも満身創痍にかわりはなく、蹴りが肩に当たったのか、片腕がブラブラと揺れている。だからこそ、内臓などは無事だったのだが。
「ハァ・・・グゥウ・・・・!!」
涙をボタボタたらしながら、少年はもう一人の少年に声をかける。
だがお互いのそれは言葉にならず、唸り声しか出てこないし、それしか返ってこない。
しかし
カラン、と
そんな状態にもかかわらず、倒れた少年は自分の持っていたナイフを足元に投げた。
投げたというよりも転がした、と言う表現の方が的確だが、それは立つ少年の足元にしっかりと落ちる。
「ヒュー・・・・ヒュ・・・タノ・・ム・・・・・・」
たったそれだけを
言葉を発することすら、激痛の走るであろうにも関わらず、それだけを言って
最後に浅い呼吸音だけを残し、少年は動かなくなった。
「あ・・・・・ァうぁぁアアアアアアアああああああああああああ!!!!」
残る少年は、そのナイフを手にして駆けだした。
たとえ少年だろうとも
彼等の半分も生きていない小僧だとしても
その叫びは、彼の魂のすべてを費やして発せられた雄叫びだった。
「そいつを・・・・返せって・・・・・言ってんだろォォォおおおお!!!」
物心ついた時から一緒に暮らしていた。
親も知らない自分の、自分たちの、血も繋がらない家族だった。
だが
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