第五章 Over World
ここに、私がいるから
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・・し・・・・」
忘れたくなかった。
忘れたくなかったから、何度も何度も繰り返した。
再現できなかった彼女を、作り出そうとしてきたのだ。
だけど、いろんなお姉ちゃんたちは全部違った。
本当のお姉ちゃんじゃない。
お姉ちゃんは
「綺麗な、キラキラした髪をしていて・・・・」
最後に見たその髪は、炎の中で揺れていた。
「透き通った、宝石みたいな目をしていた・・・」
最後に見たその目は、半分閉じられたまぶたに隠れていた。
「いつも私と一緒にいてくれて・・・・」
朝には優しく起こしてくれた。
一緒に料理も作った。
怖い夢を見たら、一晩中一緒にいてくれた。
そして何より
「私のこと、大好きって言って頭を撫でてくれたんだ・・・・・!!!」
辛い記憶。
その中に、本当の彼女の姿を見る。
そして、それは最初に出会った時の記憶を連想させ
彼女とのすべての出来事を、少女に思い出させていた。
「お姉ちゃん・・・お姉ちゃぁん・・・・・」
涙をこぼし、怯えるように震える少女。
ガタガタと震える少女は、自分を守ってくれる存在を求めた。
だが、彼女はいない。
少女に彼女は作り出せない。
辛い記憶に、潰されそうになる。
だが
「いるよ、ここに」
ここには今、彼女がちゃんと少女のそばにいる。
ふわりと、まるで包み込むような声が、少女の不安を和らげる。
少女の頬を、包むように彼女の両手がソッ、とあてられた。
そして涙をふき取り、そのままその手は少女の後ろに回される。
ギュッ、と抱きしめ
「ここに、私がいるから」
その一言だけで、少女の不安は溶けていく。
でも、彼女は「彼女」ではない。
あの人は撫でてくれる。
この人は抱きしめる。
全然違う。
「お姉ちゃんは・・・だれ?」
だから問う。
三度目の問い。
逃すものかと、絶望の黒い影が襲いくる中、彼女はそれに臆することなく拳を握り
今度はしっかりとその名を叫んだ。
「私はね・・・・綺堂唯子、っていうんだよ」
―――――――――――――――――その力は
たとえ同じ苦難に幾度襲われようとも
より凶悪な悲劇に遭遇したとしても
二度と膝をつかぬためにが故である
to be continued
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