第五章 Over World
もったいないと思わないかい?
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だが、走っていた唯子に止まるだけの時間はなく。
「目ェ閉じてないさい!!」
「マジかねーちゃん!!」
「ヤダやめてぇ!!」
ダンッッ!!
その洞窟から、一気に飛び出していった。
当然、宙に放り出される唯子たち。
そちら側に先回りしていた村人たちも、洞窟から飛び出した彼女たちを見た。
子どもを抱え、空に飛びだしたその姿に唖然としながらも、その方向へと走り出す。
「だァッ!!」
一方唯子は、崖下に広がる森の、届く範囲の一番高い気に足を付けた。
両腕は抱えているので使えないし、背負っているため転がることもできない。
あと頼れるのは、この二本の足だけなのだ。
木の側面に足を付け、不動によって衝撃を送る。
バキッ!と木に足跡が残り、唯子は別の木に向かって跳躍する。
そこでも同じように衝撃を送り、そうして少しずつ落下の衝撃を消費して、次第に下へと降りて行った。
「(スタッ)っとと、大丈夫?」
「「すっげぇ〜!」」
「おねえちゃん・・・?」
感動に目をキラキラさせる男の子たちに、不思議そうな顔をして唯子を見つめる女の子。
考えてみれば、こうした唯子の力を見るのはこれが初めてだったりする。
「どこで習ったの!?」
「うんとね・・・・どこだっけ?」
『おいこっちの方だぞ!!』
「!!―――行くよ」
会話もまともにできないまま、三人は走り出す。
そのまま教会から遠ざかろうとしているのだ。
こっちの方向には、荒野が広がるばかり。
森さえ抜ければ、そこは村の外だ。出て行きさえすれば、彼等も満足するかもしれない。
故郷からこの子たちを連れだしてしまうのは少しかわいそうだが、命には代えられない。
そう考えた唯子なのだが、森の出口にまで行ってその考えが甘かったことを実感する。
「なにあれ・・・・」
何時の間に設置したのか。
森の出口の境界線上に、大きな壁が張られていた。
その気になれば突破は出来るが、今はこの子たちがいる。
しかも敢えてなのか壁はビッチリと並んでいるわけではなく、隙間が空いているのだ。
もしあの壁の向こうに誰かがいて、待ち構えているとしたら・・・・
そうなれば狙い撃ちだ。
唯子はその場でUターンする。
道ともいえない森の中を、四人は獣道に頼って進んで行く。
獣道とは言うが、おそらく村の狩人が使っているものだろう。
と、なれば
この道に行く先は、町の中ということになる。
逃げ場はなく、逃げ道は一つしかない。
四人は逃げて行くために、その狂気のはらわたに飛び込んで行くことになった。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ