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世界をめぐる、銀白の翼
第五章 Over World
もったいないと思わないかい?
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だが、走っていた唯子に止まるだけの時間はなく。


「目ェ閉じてないさい!!」

「マジかねーちゃん!!」

「ヤダやめてぇ!!」

ダンッッ!!



その洞窟から、一気に飛び出していった。
当然、宙に放り出される唯子たち。

そちら側に先回りしていた村人たちも、洞窟から飛び出した彼女たちを見た。
子どもを抱え、空に飛びだしたその姿に唖然としながらも、その方向へと走り出す。



「だァッ!!」

一方唯子は、崖下に広がる森の、届く範囲の一番高い気に足を付けた。

両腕は抱えているので使えないし、背負っているため転がることもできない。
あと頼れるのは、この二本の足だけなのだ。


木の側面に足を付け、不動によって衝撃を送る。
バキッ!と木に足跡が残り、唯子は別の木に向かって跳躍する。

そこでも同じように衝撃を送り、そうして少しずつ落下の衝撃を消費して、次第に下へと降りて行った。




「(スタッ)っとと、大丈夫?」

「「すっげぇ〜!」」

「おねえちゃん・・・?」


感動に目をキラキラさせる男の子たちに、不思議そうな顔をして唯子を見つめる女の子。

考えてみれば、こうした唯子の力を見るのはこれが初めてだったりする。


「どこで習ったの!?」

「うんとね・・・・どこだっけ?」


『おいこっちの方だぞ!!』

「!!―――行くよ」


会話もまともにできないまま、三人は走り出す。
そのまま教会から遠ざかろうとしているのだ。

こっちの方向には、荒野が広がるばかり。
森さえ抜ければ、そこは村の外だ。出て行きさえすれば、彼等も満足するかもしれない。

故郷からこの子たちを連れだしてしまうのは少しかわいそうだが、命には代えられない。
そう考えた唯子なのだが、森の出口にまで行ってその考えが甘かったことを実感する。


「なにあれ・・・・」

何時の間に設置したのか。
森の出口の境界線上に、大きな壁が張られていた。

その気になれば突破は出来るが、今はこの子たちがいる。


しかも敢えてなのか壁はビッチリと並んでいるわけではなく、隙間が空いているのだ。
もしあの壁の向こうに誰かがいて、待ち構えているとしたら・・・・


そうなれば狙い撃ちだ。
唯子はその場でUターンする。


道ともいえない森の中を、四人は獣道に頼って進んで行く。
獣道とは言うが、おそらく村の狩人が使っているものだろう。


と、なれば
この道に行く先は、町の中ということになる。


逃げ場はなく、逃げ道は一つしかない。


四人は逃げて行くために、その狂気のはらわたに飛び込んで行くことになった。

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