第五章 Over World
あなたはうまくいくかしら?
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歯磨きをしながら唯子はその光景を見た。
神父の顔は険しく硬く、逆に家族の顔は青くてくしゃくしゃになっていた。
そのまた数分後
唯子はその「家族」が「遺族」であることを知る。
「そんな・・・・大丈夫だって言ってたのに・・・・本人だって」
神父はその晩、唯子と話をしていた。
葬儀を終え、教会には棺桶に入った遺体が安置されている。
明日にはもう墓地に埋めるらしく、場所ももう決まっている。
「本人はだるいだけと言っていたが・・・・多分、そのまま身体が緩慢に機能を失い、そして心臓も止まってしまう・・・・そんな所だろう」
「でもそんなこと・・・・病気なんですか?」
「わからん。だが、純粋に寿命・・・だったのかもしれん」
それ以降、うーむ、と頭を捻って黙りこくってしまう神父。
医者でもあるこの男がわからないならば、自分にはもっとわからない。
だが、確かに老衰ということもある。
恐らく、昨日が老人の最後の日だったのだろう。
歳も歳だったし、確かに、と納得してしまう唯子。
神父としては、ならば最期は家族と共に過ごさせてやりたかったと悔やむ。
そう悔やむ神父に遺族も責めることはなく、丁寧に葬儀をして貰ったことに感謝していた。
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翌日の夕方
その遺族はベッドで見つかった。
眠るようにそのまま、動かなくなった冷たい体で。
「そんな・・・・」
「あそこの爺さん、昨日亡くなったって・・・・」
「まさか後追い!?」
「バカ言うな・・・・子供も一緒なんだぞ・・・・」
ざわめいている村人を押しのけ、神父が街に到着する。
何もできないけど、と断りを入れたが、それでも手伝いとして来てほしいと言われた唯子も、その光景を見る。
このまま写真を取れば、寝顔の写真としてそのまま使えるだろう、そんな光景があった。
昨日まで普通に生きていた一家が、突然の衰弱死。
そんなことがあるだろうか?
その光景を見た瞬間、神父は即座に村人を家から引き離した。
そして夜の内に遺体を袋にくるみ、すぐに地面に埋めた。
「神父様!!せめて別れの言葉だけでも・・・・」
「ダメです。これは病である可能性があります」
「う、うつる病気ですか!?」
その質問に、神父は安心させるように笑って答えた。
「大丈夫です。遺体に触れないよう万全に埋葬しました。もちろん、その魂は神の御座のもとに」
そう言って、十字を切る。
その言葉に安心した村人たち。
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