第3章 リーザス陥落
第99話 トーマとユーリ
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トンの身体を抱き起こした。
「皇子よ。儂にも責がある。……皇子の傍でおりながらここまで放置した。考える事を放棄した。皇子ご自身でと、それが皇子の為と、気付かぬうちに 言い訳を重ね最善を尽くす事を放棄した。……こうやって差し伸べれば違った形にもなれたかもしれぬのに」
虚ろな目をしているパットン。その目をはっきりと見据えて続ける。
「皇子よ。……ヘルマンの血よ。目を覚ますのだ。その身に宿して居る器を解放させよ。……ハンティに護られるだけでなく、逆に護れる程強くなれ! これが最後の修行だ!」
トーマはそう言うと同時に、腰に刺している戦槌を手に取った。
「行け、ハンティ! 儂の死に場は あの地ではない。……あの男の傍だ!」
「と、トーマ……」
「魔人と手を組み、そしてリーザスだけではない。軈ては確実にヘルマンにも牙をむくであろうその厄災を解き放った責……それを儂が継ぐ。次代の者に残す訳にはいかん」
トーマは戦槌を構え、眼前にあるその厄災と称した魔人を見据えて駆け出した。
「行けェェ!!」
それを見たハンティは、ぎりっ……、と歯を食いしばり、立たされたもののまだ動ける状態ではないパットンを再び抱えた。
「……跳ぶよ! パットン!!」
「くそ……っ、くそぉ………!」
ハンティの腕の中で 小さく呟くパットン。
「トーマ……、ユーリ……! 死ぬな……、死ぬなよ……ッ!!」
そして、ハンティとパットンの姿はこの空間から消失した。
「ぬぇぇい!!」
隙だらけのノスの背に、持ちうる渾身の一撃を放つ。
だが、その一撃はノスの身体を捕らえる事はなく、見えない壁の様なものに阻まれた。それが無敵結界であると言う事は直ぐに理解できる。
「むッ!?」
ノスはトーマの攻撃を完璧に結界で防いだのだが、結界を通して感じた威力に表情を変えた。激昂した頭は ユーリとの数合の打ち合いで徐々に冷めていっていたようだ。
トーマは身体の勢いのままに 素早くユーリの隣に立つ。
「悪いな……トーマ。助太刀助かる。少々しんどかった所だ」
「ふっ……。まだまだ軽口を叩くだけの余裕はある、と言う事か、ユーリよ」
2人が並び立った。
人類最強と呼ばれる男とその男を打ち敗った男が今。
「夢にまで見た光景だ。……主の隣に立ち、魔と戦うこの光景は。………冥利に尽きる」
トーマはそう呟く。
ユーリに敗れ、その身体を休める為に数日の間眠りについていた時にトーマは夢を見ていた。
次代を担う若者たちと共に戦う己自身の姿。残り少ない命の為に時代の残党と思っていた己だが、まだ残せる物がある事を強く感じた。
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