第3章 リーザス陥落
第99話 トーマとユーリ
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この圧縮された時の中で、彼にも発破をかけられた気分だった。前に進み続ける歩みを止めない。だからこそ ハンティは強く想った。
『まだ死ぬ訳にはいかない』
例え結末は変わらなくとも。この強大な相手を前に無力だったとしても。
――また、必ず彼と会うんだ。
ハンティは そう思った瞬間 闇にさえ思えていた視界の中 突然光を見た。
光の様に早く駆け抜けた影は、目の前の凶悪な闇を打ち払った。
そして、視界はまだぼやけているが はっきりと輪郭も判ってくる。
黒い髪の男。……そう自分と同じ髪の色を持つ剣士。
「ゆー……り?」
それは 嘗て刃を交え、そして ハンティの中では 数少ない親友とも呼べる存在になったと言っていい男。
ユーリ・ローランドだった。
「……こいつは驚いたな。今回の事件で出会った魔人は2人。サテラとアイゼル。その2人だけでも十分なのに、これ以上ない大物が待ち受けていたとは、な」
キンッ と二刀を鞘に収め 眼前にいる魔人を見た。
魔人ノス
その名は、ユーリも勿論知っている。ハンティが言った様に『魔人と言えばノス』と称される程、知れた存在なのだから。
「ふむ。もう一度問おうか」
ノスは、受けた腕を軽く振ると 改めてユーリの方を見た。
鋭い眼光が頭巾の中からはっきりと見え、射殺さんばかりの殺意を携えて。
「……何者だ? キサマ」
その凶悪な殺気。普通の人間であれば それだけで心臓が止まりかねない程の圧力だったが、ユーリは それを受け止めそして一蹴する様に答えた。
「魔人相手に名乗る様な者じゃないな。……オレはお前の敵。それだけで十分だろう? それ以上にオレを、人間を知りたいのか? 魔人ノスともあろう大物が」
軽く含み笑いをしながらそう言うユーリの姿、ノスには まるでユーリには余裕があるようにも見えた。
ノスはその笑みを そして 身に纏う空気を、佇まいを全て感じ取り 久しく感じていなかった身体の芯から沸き起こる衝動と悲願の狭間で苛まれていた。
そして何よりも この数秒間のやり取りだけで察した。この目の前の男が 数十倍以上の差がある戦力をものともせず、このリーザスまで辿りついた。連れてきた魔人のサテラを打ち破り、アイゼルを抑え、自身の前にまで辿りついた人間。極めて稀有な存在だと言う事を。
「……成る程」
ノスは1つの結論に至った。
今回の一件――魔人の力を借りてヘルマンはリーザスの侵略は容易に出来た。それは当然だと言えるだろう。人間と魔人の間には決して縮まる事の無い差が存在しているのだから。
だから、ノスにとって今の今まで疑問に思った事がある。真なる
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