第3章 リーザス陥落
第99話 トーマとユーリ
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。トーマはその表情を見て、ハンティと一戦やるなどとは到底思えなかった。リーザスにとって、今回の事態を引き起こしたヘルマンの皇子は圧倒的に絶対悪だ。出会えば討つべきだと言う事は判る。それだけの事をしてしまったのだから。
だが、それでも今は人間よりも魔人の方が脅威だと言う事を踏まえれば、人間同士で争っている場合ではないと言うのも事実だろう。
魔人のその真意が、はっきりと判らない以上は。
魔人が常にヘルマンの味方であるとは到底思えなかった。恐らくは利害の一致のみだとしか思えなかった。 そして リーザスにまで攻め入り、陥落する可能性が高くなった今、魔人がどう出るか判らない。ヘルマンの為に 戦うのであれば 現時点で出てきても良い筈なのに、街で暴れているのは魔物とトーマの帰還を知らないヘルマン軍の残党のみだった。
魔人の姿は無かったのだ。
トーマは 城の方を見た。その上空には厚い雲が覆ってあり、この場に来るまでは見えていた月が全く見えない。漆黒の闇がリーザス城にはあった。――胸騒ぎがした
『……行くぞトーマ』
『うむ』
それはユーリ自身にも感じていたのだろう。
だからこそ、これ以上は何も言わず 素早く城へと駆け出していった。
そして、今に至る。
ノスの凶悪な圧力はハンティをパットン諸共飲み込もうとしていた。
後ほんの数寸 手刀を動かせば ハンティの身体は裂け、絶命していた事だろう。治癒、再生能力も一般的なカラーと比べて群を抜いており、生半可な傷は一瞬で完治してしまうのだが、竜族から受けた攻撃はどういう訳なのか全く治癒する事が出来なかった。
それが、ハンティが傷が広がり続けた理由だった。
迫りくる凶悪な力。その刹那の瞬間 時が極限にまで収縮された。所謂走馬燈、と言うものだった。
限りなく長い体感時間の中、ハンティが考えていたのは 自分が死ぬ事よりもパットンの事だった。己の死の事より パットンを考えていた理由は今は亡き親友に誓った約束だった。死の間際に交わした約束。それを果たせぬまま、死を迎えてしまう事に 絶望さえ覚える。
――そして もう1つ ハンティの頭の中に過ったのは あの時の彼の声だった。
『愛おしいドラゴンのカラー』
それは 頭の中に直接語りかけてきた謎の声。
久しく感じていなかった温もりがその声にははっきりとあった。とても温かい気持ちになれたんだ。
そして、その声の主の正体は判らなかったのだが、ハンティは、その声は彼が関係している事だけは理解できた。だからこそその声に、彼に約束したんだ。
『私は前に進む』
と。
パットンの事も勿論あるが、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ