4. 海に出たことのない艦娘(1)
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乱させる、驚愕の事実だった。
「ぼくは……実はぼくは……」
「お、おう……ゴクリ……」
「……僕は、男の艦娘なんだッ」
率直に言うと……私ははじめ、ゆきおが言っていることが理解出来なかった。
「え……ごめんゆきお……男の……なんだって?」
「艦娘。……僕は、男の艦娘なんだ」
その後、あまりに突拍子のない事実を突き付けられ頭の回転が完全にストップしている私に、ゆきおが至極真剣な表情ですべてを説明してくれた。
話は、ゆきおがこの鎮守府に来る数カ月前に遡る。全身が気だるくなったゆきおは父さん……つまり提督に連れられ、軍の医療機関で精密検査を受けたらしい。血液検査や身体の細胞の検査、胃カメラとかその他諸々の検査を受けた結果、驚愕の事実がゆきおにつきつけられたそうだ。
その運命の日、ゆきおは自分の家で栗まんじゅうを食べてくつろいでいたそうだ。のんびりと栗まんじゅうを味わって幸せを堪能していると、提督が血相を変えて帰宅。手には病院で見た覚えのある、薄水色の大きな封筒があった。
『雪緒!』
『検査の結果、出たの?』
『ああ。聞いて驚くなよ雪緒!』
『う、うん……ゴクリ』
『雪緒。お前はな……お前は、艦娘だ!!』
『バカなッ!? 男なのに艦娘!?』
『父さんもびっくりだ!! まさか自分の息子が艦娘だったとは……!!』
その後、『男の艦娘なんて前代未聞だから、鎮守府で保護すべきだ』『世界初の男の艦娘適合者だなんて、最重要機密事項だ』と上から勅命を受けた提督が、自分の鎮守府にゆきおを引っ越しさせたとのことだ。
この境遇に関しては、ゆきおは元々、将来は父さんと同じ仕事をしたかったため、いうほどショックは受けなかったらしい。元来身体が小さく弱かったのがコンプレックスだったこともあり、艦娘への適性があるということも、むしろうれしかったと語ってくれた。
ただ、現在はまだゆきお専用の艤装を開発している段階で、すぐに艦娘として活躍出来るわけではないらしい。私たち既存の艦娘の艤装ではサイズ的な問題で不都合があるらしく(ゆきおには関係なさそうだけど……)、今はゆきおの身体検査を繰り返し、完全にゆきおにフィットする艤装を開発している段階なんだとか。
「だから僕はここにいるんだ」
「ふーん……」
ゆきお自身も言っていたが、『男の艦娘』なんて存在、私は聞いたことがない。私自身は艦娘だから、言ってみればこの業界の最前線の存在だ。その私が知らない、聞いたことのない話なんて、あるのだろうか……?
だが、私をまっすぐと見据え、真剣で、キラキラと輝いた眼差しを向けるゆきおに対し、その疑問を口にすることは出来なかった。友達の言葉を疑うなんて、悲しいことをしたくないという気持ちもあった。
「と
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