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彼願白書
リレイションシップ
クイーン・プロモーション
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り戻すには……この指環を、自分が選んだ者に渡す。それが、貴方に必要なことですわ。」

熊野の言葉を聞きながら、壬生森はやや不満げに、加賀の置いた指環を指先で摘まんで遊ばせる。
珊瑚の紅い珠が、壬生森の覚えているあの日のまま、輝いて見えた。

「……生者に渡すとは、限らないよ?」

「熟考の末、そうするならば私は止めませんわ。出来れば、私達の誰かが受け取るのが喜ばしいですが。理屈でも、感情でも。」

熊野は落ち着いた表情ながら、強く言い切る。
後ろにいる加賀も、腕を組んだ姿で壬生森を見ている。
叢雲は、少し不満げな横顔で、そっぽを向きながら、目端だけは壬生森を見ている。
静かにしている鈴谷は、何故か壬生森と同じような表情で眉間に指を当てる。
壬生森は、これからの前途を考えたのか、僅かな溜め息をひとつ吐いて、熊野が机の上に置いていたケースを開けて、その中に珠玉の指環をしまう。

「熟考する時間はくれるんだね?」

壬生森の言葉に、熊野は眩しいくらいの笑顔で答える。

「下手の考え、休むに似たり。そこはお忘れなきよう。」

「……相変わらず容赦のない。」

壬生森がジャケットの内ポケットに手を伸ばそうとしたところで、鈴谷から飴の入った缶箱を差し出される。
からり、と缶箱の丸い口から緋い飴玉を手の平に転がす。
どこまでも、壬生森の行く先にはこの色が付いて回るらしい。

「……とりあえず、世話になりそうなところへ挨拶に行くことから始めようかな。」
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