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彼願白書
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クイーン・プロモーション
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督」ではなく「壬生森」にすべきことを、熊野は提示する。

「加賀さん。」

「加賀、でいいわ。ここでは貴女のほうが先達だもの。」

加賀が手を滑らせなぞるように机の上に置いたのは、紅い珠の光る指環。
壬生森が長年、加賀に返すように言っていた、かつての夢の残滓。

「貴方が提督として復帰する。そして、私は貴方の部下となる。この指環が忘れ形見から、実利あるものとなってしまう前に、一度は返すべきだと思うの。」

「は?」

なんのことか理解出来なかった壬生森に、加賀は指環に続いて熊野からの書状を机に広げる。
そこに書かれた文章は、壬生森が顰め面をするには充分な内容だった。

「熊野、加賀がこのニライカナイの所属とはどういうことだ?」

「前任のニライカナイ司令官として、今後を見越した戦力強化をすべきと判断しました。もとより蒼征は空母打撃群として始まったハズですわ。それと、優秀な人材を遊ばせておくような怠慢を、私は美徳とは思いません。部長として、一番最初の仕事を私情からのクビ切りから始める提督ではないでしょう?」

謀られたな、と壬生森は思う。
しかし、ではなぜ、指環を返してきたのか。
壬生森はそこの意図を計りかねていた。

「この指環を横から奪い取ったまま、戦線復帰してなし崩し的にケッコン艦となるのはさすがに他の者が承知しないでしょう。私も、後ろから槍で串刺しにはなりたくありませんので。」

「あら、心当たりがあるの?槍持ってる奴に後ろからぶち抜かれるような、そんな心当たりが?」

加賀の言葉に、一歩後ろにいた叢雲が淡々と問う。
その右手は、何かを掴む前のように開いて、わずかに腰の後ろに引かれている。

「そうね。なきにしもあらず、かしら。」

「察しがいいわね。私もこの寂しい執務室の壁を飾る、ちょっと斬新で愉快なオブジェにしてやろうかと思ったところよ。」

くすりと笑う加賀と、にやりと笑う叢雲。
どちらも眼が笑ってはいない。

「二人とも、そこまでにしてくださいな。話が進みませんわ。」

ちっ、と舌打ちしたような、ぎりっ、と歯軋りしたような音がして、加賀と叢雲が熊野より後ろに下がる。

「この指環を加賀に返してもらったのは、貴方が提督として当然の権利を取り戻すためですわ。」

「当然の権利、とは?」

熊野の言葉に、壬生森は冷めた顔で尋ねる。
熊野は、壬生森が何を思っているのか、ある程度はわかっていて、それでも大事なことだと、そう思って踏み込む。

「ケッコン艦を選ぶ権利、選ばない権利。貴方が持つこの指環は、貴方が渡したいと思った相手にこそ渡すべきです。」

「今更かね?」

「今更もなにも、貴方を何年も振り回してきたのは、間違いなく、この指環。貴方が己を取
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