3. もう一度
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「いっけぇえー!!」
「もっといけー!!」
ゆきおと共に、たまらず叫ぶ。もっと飛んでけー。ゆきおが作って私が飛ばした紙飛行機。はるか先まで、まっすぐすいーっと、ずっとずっと、ずーっと先まで飛んでけー。
私とゆきおの激励が通じたのか、紙飛行機はふわりと減速してはすいーっと滑空しつづけ、やがて私たちから見えなくなった。私たちには、紙飛行機が落ちた瞬間は見えなかった。相当遠くまで飛んでいったようだ。
「す、涼風、すごいよっ」
ゆきおを振り返った。興奮したのか、幾分額が汗ばんで、顔が紅潮している。ハッハッと肩で息をして、窓の向こうをジッと見ていた。
「ゆきおもすげーな! あんなに飛ぶ紙飛行機を作れるんだからっ」
「んーん。僕は本の通りに作っただけだよ。すごいのは涼風だ」
私こそ、本の通りに飛ばしただけなのに……
「んじゃ、あたいら二人ともすごいってことにしようぜ」
なんだか恥ずかしくて、そんなことを口走ってしまう。本当は『ゆきおすごいっ!!』て言いたかったけれど。
私の言葉を受けたゆきおは、興奮冷めやらぬ感じで肩で息をしながら、私の隣に来た。
「すずかぜ。手」
「手?」
「うん。手」
ゆきおが何をしたいのかいまいちわからず、私は右手を肩の上まで上げた。その途端、ゆきおは私の右手を自分の右手でパシンと叩き、小気味いい音を周囲に響かせる。
「やったね涼風!」
弾んだ声でそういうゆきおの顔は……出会ったのが昨日の今日で、こんなこと考えるのはおかしなことだけど……
「おう! やったなゆきお!!」
「うん! ありがと涼風!!」
真っ白い歯をきらりと輝かせ、ニシシと笑うその表情は、私が今まで見たことがないほど、輝いていた。
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