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俺の涼風 ぼくと涼風
3. もう一度
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、本に書いてある飛ばし方を読む。難しい解説はよくわからないが、イラストで見る限り、昨日のゆきおの飛ばし方と大差ないようだ。

「これ、昨日のゆきおの飛ばし方だなー」
「うん。一応これ読んでチャレンジしてみたから」

 ベッドから立ち上がり、それとなく身体を動かしてみる。右手で紙飛行機を持ち、左半身を前に出して構える。左腕をまっすぐ前に向かって伸ばし、右肘は曲げておく。

「ぷっ……」
「なんだよー」
「いや、なんかキリッてした涼風が面白くて……」
「てやんでいっ。あたいはいつだって真剣だぜっ」

 ゆきおの失礼なツッコミに言い返したあとは、予行演習の続きだ。腰をひねって右半身を前に出し、同時に右肘を伸ばして、紙飛行機を放つ……やってみると、意外とこれが難しい。ゆきおって、昨日こんな動き、してたっけ?

「僕は右手の動きだけ真似した」
「だから真っ逆さまにストーンって落ちたんじゃねーの?」
「うるっさいなー」

 口をとんがらせ、へそを曲げたらしいゆきおは、そう言って私から視線を外す。まだ肩が軽く上下していて、息切れが収まってないらしい。

「よし。んじゃやってみっか!」
「おー」

 再び重い本を苦労して自分の膝から下ろしたゆきおと、一緒に窓際に移動する。カーテンがパタパタと揺れ、気持ちいい秋風が部屋に入ってきていた。外は秋晴れでとてもいい天気。お日様も機嫌よく力いっぱい輝いてるし、遠くに見える海の水面も、キラキラと輝いてとても綺麗だ。

「よーし飛ばすぞー!!」
「ちょっと待って涼風」

 紙飛行機発射体勢に入っていた私を、すぐ隣のゆきおが制止した。近付いてみてわかったのだが、この窓は言うほど大きくはない。私とゆきおは窓から身を乗り出していたが、二人で身を乗り出すと、自然と身体が密着する程度の大きさだ。

 私の背中にぴったりとくっつくゆきおは、左手を窓の外に伸ばし、風の強さをはかっているようだった。秋風のひやっとした冷たさを感じていた私の肌に、ゆきおの身体の温かさが心地いい。

 やがて風が止まる。カーテンのたなびきが収まり、秋風の冷たさを感じなくなった。

「ん。今だ」
「ゆきおー、いいかー?」
「うん」

 ゆきおが私の背中から離れた。意を決し、私は左手をまっすぐに前に伸ばす。

「……」
「……」

 二人共無言になる。腰を回転させ、右半身を前に出し……

「……よいっしょー!」

 右肘を伸ばし、私はタイミングよく紙飛行機を空に放った。

「ぉおっ! 涼風すごいっ!」

 私が放った紙飛行機は、真正面のはるか先、大海原に向かって、まっすぐ、すいーっと飛んでいく。時折ふわりと減速しつつ上に持ち上がり、またすいーっとまっすぐ前に、飛んでいった。


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