暁 〜小説投稿サイト〜
俺の涼風 ぼくと涼風
3. もう一度
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
り方」

 ゆきおに促され、開かれたページに視線を移す。私とゆきおはちょうど向かい合ってるから、本の文字が逆さまになってて読みづらい。

「……んー。読みづらい」
「あ、ごめんね……」

 私の一言を受けて、ゆきおは慌てて本の上下をひっくり返そうとするが、やっぱり、さっきあれだけ持ち上げるのに苦労した本だけに、ひっくり返すこともゆきおにとっては重労働なようだ。再び顔を真っ赤にして、『ふんッ!!』と声を上げていた。

「あ、いいよゆきお。あたいがゆきおの隣に行く」
「え、でも……」
「いいからいいからー」

 戸惑うゆきおには目もくれず、私は強引にゆきおの隣に腰掛け、ゆきおの膝の上に置かれたその大きな本を覗き込んだ。私の隣で、顔を真っ赤にしているゆきおの身体からは、消毒薬の香りがほんのりと漂っていた。

 ゆきおが見せてくれたページには、どうやら紙飛行機の作り方が書かれているようだった。文章は小難しいことが書いてあって意味がよくわからないが、イラストの方は私でもよく分かる。どうやら紙をこの通りに折っていけば、よく飛ぶ紙飛行機が出来上がるらしい。

「涼風、昨日の紙飛行機、取ってくれる?」
「あいよー」

 私が持ってきた紙飛行機をキャスターから取って、ゆきおに渡す。ゆきおはその紙飛行機をパタパタと開き、元の一枚の紙に戻した。どうやら折り紙で作ったものではないらしく、戻された紙は結構大きな、長方形の形をしていた。

「A4サイズの紙なんだ」
「へー……」

 そのままゆきおは、開いた紙を再度折り直して、再び元の紙飛行機に戻した。殺気の紙飛行機と違う部分は、左右の大きな翼のさきっちょが、下向きに折り曲げられてるところだ。本によると、これでまた面白い飛行が出来る……と書いてあった。

「よし。飛ばしてみよう」
「おーう。……ん?」

 ゆきおが開いている本のページを再び見る。『よく飛ぶ飛ばし方』という解説が乗っていた。

「なーゆきお」
「ん?」
「この飛ばし方、あたいがやってみてもいい?」

 私は、その飛ばし方の解説を指さし、ゆきおに聞いてみることにした。

 この本をあれだけ苦労して持ち上げていたゆきおだ。ひょっとしたら昨日、この紙飛行機が全然飛ばなかったのも、ゆきおの力が弱かったからかもしれない。だとしたら、私がこの本のとおりに飛ばせば、紙飛行機は昨日よりも遠くに飛んでいくのかも。そう考えると、私の胸がワクワクしてきた。

 私の提案を受けたゆきおは、ちょっと考えた後、

「いいよ。んじゃ涼風、飛ばしてみて」

 とすんなりと承諾してくれた。

「よっしゃ! んじゃあたいが遠くまで飛ばしてやるぜ!!」
「うん。頼んだよー涼風ー」
「あいよーっ」

 私は改めて
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ