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俺の涼風 ぼくと涼風
3. もう一度
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ゆきおー! 元気出せって!!」

 意気消沈してるゆきおがなんだか不憫で、私は振り返り、ゆきおの肩を勢いよくバシンバシンと叩いてみた。その度に、ゆきおの華奢な身体は、ぐらんぐらんとよろけていた。

「うう……痛いよ涼風……」
「だーいじょうぶだってー! ……」
「……う、うん?」

 フと、ゆきおの手の大きさが気になった。私はゆきおの右手を取って、その手の平に自分の左手を広げて、ぴたっと重ねてみる。

「ん……」
「どうしたの?」
「……」
「?」
「……大きさ、ほぼいっしょ」
「ばかなッ!?」

 手の平から感じるゆきおの体温は、温かくて、ちょっと気持ちよかった。



 それが昨日の話。その後、紙飛行機を返す約束をして、今に至る。ゆきおは基本的に、一日中ずっとこの部屋にいるらしい。

「こんなところにずっと一人でいて、つまんなくねーか?」
「本あるから。……でもちょっとさみしい」
「だろー?」
「だから……涼風が来てくれて、ちょっとうれしいんだ」

 そう言って、私に向かって優しく微笑んでくれてゆきおは、そのままキャスターに手を伸ばした。『紙飛行機で分かる航空力学』という、ひどく難しそうなタイトルの本を右手に取ると……

「ふんッ……!」

 思い切り力を込めて、右手でそれを持ち上げようとしていた。それでも本は持ち上がらず、ゆきおはさらに力を込めて持ち上げようと、本を持つ右手をプルプルと震わせている。でも本は持ち上がらない。

「ゆきおー」
「……ん!? なに!? ふん……ッ!!」
「取ってやろうか?」

 右手だけでなく、体中がプルプルと震え始めた。顔も真っ赤になってるし、ゆきおは相当な力を入れて持ち上げようとしているらしい。でも本は持ち上がらない。これだけほそっこい身体をしてるゆきおだから、きっと力がないんだろうな……。

「い、いい……自分で……取る……からッ!!」

 男の子の意地なのか、それとも何か他に理由があるのか、真っ赤な顔のまま、ゆきおは私の助力を明確に拒否した。しばらくの奮闘の末、『くぉおあッ!!』という魂のこもった雄叫びと共に、ゆきおは本を持ち上げ、自分の元に持ってくることに成功した。

「ふぅ……」
「ぉお! やったなゆきお!!」
「いや……はぁ……はぁ……これ、ぐらい……はぁ……」

 キャスターに向かって思いっきり身体を伸ばしていたゆきおは、そのまま布団から身体を出して、ベッドにこしかけていた。よほどの気合を入れていたらしく、自分の膝の上に本を置いたゆきおの肩は上下していて、息を切らせていた。

 そのまま本をぺらぺらとめくり、ゆきおは、あるページを開いて私に指差して見せる。

「ほら、これ」
「ん?」
「その紙飛行機の作
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