3. もう一度
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んー……」
「うう……」
ゆきおが気まずそうな表情を浮かべる中、摩耶姉ちゃんは私とゆきおの頭のてっぺんを交互に見比べ、私たちの背丈の差を厳密に計っているようだった。
「んー……ちょっとわかりにくいなー」
私もちょっと気になって、ついゆきおの顔を見てしまう。ゆきおはほっぺたを少々赤くしてうつむき、なにやらもじもじとしていた。
「仕方ない。お前ら、背中合わせで立ってみろ」
「ぇえッ!?」
ゆきおの悲鳴を気にせず、摩耶姉ちゃんは私たちの背中をぴたっと合わせ、私たちの後頭部をコツンと合わせた。ノースリーブを着ている私の二の腕の肌に、ゆきおのカーディガンのふわふわと柔らかく優しい、そしてほんのりと温かい感触があった。
「ねー。摩耶姉ちゃん、まだ?」
「ちょっと待ってろ待ってろ。んー……」
「うう……」
わざとらしく顎に手を当て、私たちの背丈を見比べてる摩耶姉ちゃん。提督を見ると、彼も私たちの背の高さが気になるようで、私たちを興味深げに見比べている。摩耶姉ちゃんと提督……まったく同じポーズを取っているのは偶然だろうか。
「と、父さん……」
「ん?」
「やめさせて……」
「えー。提督も気になるよなぁ」
「構わん。これは命令だ。うちの息子とうちの涼風、どっちが背が高いかハッキリさせろ」
「了解だっ」
「うう……」
でも、よほど私とゆきおの身長は拮抗しているらしい。これだけじっくりと見比べて、どっちが高いか分からないだなんて……。
でも、実は摩耶姉ちゃんの狙いはそこではなかったらしい。
「摩耶さん」
「お?」
それは、摩耶姉ちゃんの後ろを素通りした、榛名姉ちゃんの一言で分かった。
「悪戯もそのぐらいで」
「お、おお?」
「榛名は涼風さんの方が背が高いと思いますよ」
私に背中を向けて去っていく榛名姉ちゃんが、どんな顔をしていたのかはよくわからなかった。だけど私は、お盆を片付けて食堂をあとにする榛名姉ちゃんの背中に、なんとなく懐かしい雰囲気を感じた。
「ねえねえ涼風」
「ん?」
「いたずらって……?」
「わかんないけど……摩耶姉ちゃんっ!?」
「んーわりぃわりぃ。確かに涼風のほうが背が高いってすぐわかったけど、お前が元気だったからさ」
左手で頭をポリポリとかき、私とゆきおに苦し紛れの返答を返す摩耶姉ちゃんは置いておいて……
「うう……」
「? どしたーゆきお?」
「僕が涼風より背が低いなんて……ショックだ……」
私の後ろで背中合わせに立っていたゆきおはそう言って、がっくりと肩を落としていた。確かに同じぐらいの年齢なら、男の子の方が背が高いってのは、どこかで聞いたことがあるけれど……。
「まぁそんなに落ち込むなよ
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