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俺の涼風 ぼくと涼風
3. もう一度
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。艦娘の涼風をなめんじゃあねーぜっ」

 けったいな本を元の位置に戻し、私は続いて二冊目の本に目をやる。『紙飛行機で分かる航空力学』という、これまた分厚くてでっかい本で、『航空力学』という言葉がすでに自分にとっては理解不能だった。さっきの本といい、ゆきおはこんな難しい本を読んでいるのか。私はその本を手に取り、中のページをペラペラとめくる。

「ゆきお、なんだか難しい本読んでるんだなぁ」
「それ、興味あるの?」
「んーん」
「んじゃ、なんで手に取ったの?」
「んー……なんとなく?」
「なんとなく?」
「おうっ」

 不思議そうな表情を浮かべたゆきおは首を傾げ、私の顔をジッと見つめた。私もつい、じっとゆきおの顔を見る。不思議なことに、あれだけワクワクでいっぱいだった私の胸は、いつの間にかとても落ち着き、安らいでいた。ゆきおが読んでいた本をパタンと閉じる。ほんのりと消毒薬の香りを纏ったそよ風が、私の顔を優しくなでた。



 ゆきおと出会った昨日の夕食時のことだった。たくさんの艦娘たちでにぎわう食堂内で、提督がゆきおのことをみんなに紹介してくれた。朝食の時と同じように、提督はフライパンとお玉でカンカンと金属音を鳴らして、私たちの注意をひいた。

「みんな! 朝に説明した新しい仲間の紹介をしたい!!」
「おー! そういや朝そんなこと言ってたクマ!!」

 アホ毛をふにゃふにゃと動かしながら、球磨さんがそんな風に茶々を入れていた。提督はその茶々を無視し、食堂の入り口に向かって手招きをする。ちょいちょいという感じの手招きを受けて、入り口から入ってきたのは。

「……ゆきおだ」

 初めて言葉を交わしたあの時と同じく、純白の部屋着にクリーム色のカーディガンを羽織った、おかっぱ頭のゆきおだった。食堂内のみんなの注目を静かに浴びながら、ゆきおは提督のそばまでとことこと歩いてくる。

「艦娘じゃないんだ……」
「男の子……なのです?」
「男の子……いや、男の娘……? ジュルリ……」

 食堂内のところどころから、こそこそとみんなの声が聞こえてきた。艦娘のみんなは、新しい仲間が艦娘ではないことや、男の子なことに対する驚きなどなど……反応は様々だ。

 もちろん、私の向かいの席に座っている摩耶姉ちゃんも、初めて見るゆきおには興味津々なようで……。

「なー涼風ー」
「ん?」
「お前がさっき話してたやつ、アイツか?」

 私にこそこそとそんな質問を投げかけてくる。適当に『うん』と返事をしつつ、私はゆきおを見つめ続けた。ゆきおはきょろきょろと周囲を見回していて、落ち着きがない。

 さっきはよく分からなかったが、ゆきおは男の子なのに、とっても華奢な身体をしていて、背の高さも私と同じぐらいしかない。みんなに
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