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俺の涼風 ぼくと涼風
3. もう一度
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ぁと思いつつ、私はゆきおのといかけに大声で答える。ゆきおは、私のことに気付いてない。だから私は、自分に気付いて欲しくて、さらに大声で名乗った。

「あたいだ! 涼風だ!! 昨日会った涼風だ!!」
「え、す、涼風?」

 私の気のせいなのかも知れないが、ゆきおの声がほんの少し、上ずった気がした。

「ほ、ホントに来てくれたの?」
「なんだよー。あたいが来ちゃいけなかったのかー?」
「んーん」
「昨日の紙飛行機、返しに来たんだ。入っていいか?」
「どーぞ」

 『はーい』と返事し、ドアノブに手をかけ、ドアを引き開いた。途端に部屋の中の空気が、私の鼻に消毒薬のような独特の香りを届けた。

 部屋の中を見回す。そんなに広くない間取りの中心に、真っ白いシーツと敷布団が敷かれたベッドが置いてあり、その上にゆきおがいた。昨日と同じ真っ白い部屋着の上にクリーム色のカーディガンを羽織ったゆきおは、ベッドの上で上体を起こし、一冊の本を開いて読んでいるようだった。

「よっ! 本読んでたのか?」
「うん」

 右手を上げて、改めての挨拶を交わす。自然と笑顔になる。こんなことは久しぶりだ。

 ベッドのそばまで歩きながら、改めて部屋の中を見回した。まだ引っ越して間もないからか、部屋の中は大した物がない。テレビもなければパソコンもない。物が置ける小さなキャスターはあるが、勉強が出来る机や本棚はない。フローリングの床の上には、ベッドのそばに腰掛けられる二人がけのソファはあるが、こたつとテーブルもない。壁は真っ白でキレイだが、壁がけ時計もカレンダーもない。良く言えばスッキリとした……悪く言えば生活感のない、とてもキレイな部屋だった。

「はい。昨日の紙飛行機、ここに置いとくな」
「うん。ありがと涼風」
「いいってことよー」

 ベッドのそばにあるキャスターの上に、持ってきた紙飛行機を置いた。キャスターの上は物置き台になっているようで、本二冊と目覚まし時計、ノートとボールペン、シャーペン二本と消しゴムが置いてあった。

 紙飛行機をキャスターの上に置いて、代わりに一冊手にとって、表紙を見てみた。『帝国海軍駆逐艦のすべて』。とても大げさなタイトルの、ずっしりと重い分厚い本だが……開いてみるとなんてことはない。私たち駆逐艦の艦娘の紹介が乗っている本のようだ。

「涼風のこと、その本に書いてあったんだ」
「へー」

 白露型のページを探し、ぺらぺらとめくっていく。私は……五月雨の次に載っている。その次は……朝潮型ネームシップの朝潮だ。なんか変な順番……。

「なんであたいの次が朝潮?」
「よくわかんない。改白露型も涼風以外はページが離れてるし」
「うう……」
「でもその本、よく持てたね。結構重いのに」
「てやんでぃ
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