第七章
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こう言ったのである。
「こうした事件は専門ですが」
「後味は悪いですよね」
「いい結果になるものではありません」
「善良だった人が不意に狂気に取り憑かれ」
精神病をあえてこう表現する。
「そしてああなってしまうのは」
「ええ、本当にですね」
「どうしても」
「見ていて気分のいいものではありません」
例え捜査や取調べ、そしてその後の患者としての治療においてもだというのだ。
「あの人もです」
「このままずっとですよね」
「あの病室で生きるのですね」
「そうなります。確かに実刑には問われませんでした」
だがそれでもだというのだ。
「既に心が壊れそのうえで、です」
「ああして出られなくなる」
「一生」
「狂気、精神の崩壊は確かに周りを巻き込み不幸を創ります」
宮里は言っていく。
「しかしその中心にいるその人が最もです」
「不幸である」
「狂気であるが故に」
本郷と役はその老人を見ながら述べる。老人は今は壁に食事のスプーンで何かを必死に刻み込んでいた。それは指だった。指の絵を必死に刻み込みそれを見て笑っていた。焦点の定まっていない目で虚ろに笑っていた。
指 完
2012・6・24
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