2. きっかけは紙飛行機
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眩しい朝日が私の瞼の奥まで届く。知らない内になんとか眠りについていたらしい。未だに『眠い』と文句を言っている身体を無理矢理起こし、大きく背伸びをした。
「……おはよ」
誰に対して言ったわけではない。強いて言えば、未だに目覚めない、私自身への挨拶。未だに重くて開ききらない瞼をこすりながら、ベッドから出てカーテンを開ける。
「……ん」
途端に山吹色の太陽の輝きが私を包む。お日様は私の身体にぽかぽかとしたぬくもりを届け、まだ夢と現実の境目にいる、私の身体を優しく起こしてくれた。少しずつ確実に、私の身体が目を覚ましはじめていた。
太陽に照らされた室内が、山吹色に輝き始めた。昨日見た夢のような、薄暗い暗闇とは違う。そのことに再び安堵した私の耳に、乱暴にドアが開くガツンという音が届いた。
「おはよー涼風!!」
鼓膜にビリビリと届く大声にプレッシャーを感じつつも。私は背後のドアを振り向いた。そこにいたのは、数少ない昔からの仲間で私の姉貴分、摩耶姉ちゃんだった。摩耶姉ちゃんは外の太陽に負けない笑顔を浮かべ、スタスタと私のそばまで歩いてくると、私の頭を乱暴にくしゃくしゃと撫でてくれた。
「んー? 挨拶はどうしたー?」
「ん……おはよー摩耶ねーちゃん」
太陽の光を受けてキラキラと光っていた摩耶姉ちゃんの瞳が、私の顔を見た瞬間、心配の色を浮かべた。昨晩、あの悪夢のおかげで満足に睡眠を取れなかった私の目の下には、うっすらクマができているらしい。頭を撫でてくれていた摩耶姉ちゃんの右手が、私のほっぺたに触れ、親指で私のクマを優しく拭う。
「……眠れなかったのか?」
「うん」
「夢に見たのか?」
「うん……」
「そっか……」
目の下をさする、摩耶姉ちゃんの親指の優しい感触が、私の心をホッとさせてくれる。こうやって摩耶姉ちゃんは、いつも私のそばにいて、私のことを気にかけてくれていた。それこそ、あの男の元で戦っていた、あの時から。
しばらく私のほっぺたを優しくさすっていた摩耶姉ちゃんの瞳が、再び明るく輝きだした。摩耶姉ちゃんはいつも、こうやって私に対して深追いせず、ただそばにいてくれる。
「……行こうぜ。朝ごはん、食えなくなっちまう」
「うん」
外のお日様に負けない輝きを放つ、笑顔の摩耶姉ちゃんは、私の右手を取って、部屋の外に引っ張り出そうとしてくれた。摩耶姉ちゃんは重巡洋艦だから、私と比べて力が強い。私がどれだけ抵抗しても、いつも力づくで、私を輝く外に連れ出してくれる。
「ちょ、待って摩耶姉ちゃん! あたい、まだ着替えてないっ!」
「あそっか。んじゃさっさと着替えな。あたしは外で待ってるよ」
パッと手を離してドアの向こうに行った摩耶姉ちゃんに促され、私は寝巻きを
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