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俺の涼風 ぼくと涼風
2. きっかけは紙飛行機
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を聞いた。

「えっと……」
「おーい涼風ー!!」

 入渠施設の入り口から、私を呼ぶ摩耶姉ちゃんの声が響いた。見ると、摩耶姉ちゃんが両手でメガホンを作り、それをコチラに向けて、大声で私を呼んでいる。何かあったのだろうか。

「はーい! どうした摩耶ねえちゃーん!」
「提督が呼んでっぞー! 一緒に執務室いくぞー!!」
「はーい!」

 うーん残念……。でも、この少年とはきっとまた会えるはず。彼の名前は、その時に知ればいい。なぜか気になる紙飛行機の元にかけ、私はそれを手に取るために腰を下ろした。

「ごめんな! あたい、用事が出来たから、行かなきゃ」
「え、う、うん」
「名前はまた今度教えてくれよ!」
「……」

 突き刺さってしまった紙飛行機を地面から抜き取り、立ち上がって彼に別れを告げた私は、これまた随分と久々に、右手を上げて、彼に対してブンブンと勢い良く左右に振った。なんだか新鮮だ。何もかもが新鮮でワクワクする。こんなに楽しい気持ちを抱いたのはいつぶりだろう。

 なんて私が思っていたら。さっきまでまごまごしていた彼は、自分に背中を向けて去っていこうとする私の名前を、おっかなびっくり……だけどちょっと弾んだ声で呼んでくれた。

「えと……す、涼風っ!」

 彼を振り返った、私の視界に映ったものは。

「んー?」
「雪緒! ……僕は、北条雪緒!!」
「……ゆきお。そっか。ゆきお……ゆきお……」
「……す、涼風……すずかぜー!」
「ゆきおーっ!!」
「よろしく! よろしく涼風!!」
「おーう! よろしくなーゆきおー!!」

 冷たく心地いい風の中で佇む、純白の部屋着に優しいクリーム色のカーディガンを羽織った新しい友達ゆきおの、嬉しくて弾みだしそうな、でもとても優しい笑顔だった。

 ゆきおと名乗りあった後、私は摩耶姉ちゃんの元に駆け寄る。手には、さっきまで地面に突き刺さっていた、ゆきおの紙飛行機があった。

「摩耶姉ちゃんおまたせ!」
「おう」

 いつもより弾んだ返事を摩耶姉ちゃんに返したその時、摩耶姉ちゃんの口元が、うれしそうにニコリと笑っていた。


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