2. きっかけは紙飛行機
[9/9]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
を聞いた。
「えっと……」
「おーい涼風ー!!」
入渠施設の入り口から、私を呼ぶ摩耶姉ちゃんの声が響いた。見ると、摩耶姉ちゃんが両手でメガホンを作り、それをコチラに向けて、大声で私を呼んでいる。何かあったのだろうか。
「はーい! どうした摩耶ねえちゃーん!」
「提督が呼んでっぞー! 一緒に執務室いくぞー!!」
「はーい!」
うーん残念……。でも、この少年とはきっとまた会えるはず。彼の名前は、その時に知ればいい。なぜか気になる紙飛行機の元にかけ、私はそれを手に取るために腰を下ろした。
「ごめんな! あたい、用事が出来たから、行かなきゃ」
「え、う、うん」
「名前はまた今度教えてくれよ!」
「……」
突き刺さってしまった紙飛行機を地面から抜き取り、立ち上がって彼に別れを告げた私は、これまた随分と久々に、右手を上げて、彼に対してブンブンと勢い良く左右に振った。なんだか新鮮だ。何もかもが新鮮でワクワクする。こんなに楽しい気持ちを抱いたのはいつぶりだろう。
なんて私が思っていたら。さっきまでまごまごしていた彼は、自分に背中を向けて去っていこうとする私の名前を、おっかなびっくり……だけどちょっと弾んだ声で呼んでくれた。
「えと……す、涼風っ!」
彼を振り返った、私の視界に映ったものは。
「んー?」
「雪緒! ……僕は、北条雪緒!!」
「……ゆきお。そっか。ゆきお……ゆきお……」
「……す、涼風……すずかぜー!」
「ゆきおーっ!!」
「よろしく! よろしく涼風!!」
「おーう! よろしくなーゆきおー!!」
冷たく心地いい風の中で佇む、純白の部屋着に優しいクリーム色のカーディガンを羽織った新しい友達ゆきおの、嬉しくて弾みだしそうな、でもとても優しい笑顔だった。
ゆきおと名乗りあった後、私は摩耶姉ちゃんの元に駆け寄る。手には、さっきまで地面に突き刺さっていた、ゆきおの紙飛行機があった。
「摩耶姉ちゃんおまたせ!」
「おう」
いつもより弾んだ返事を摩耶姉ちゃんに返したその時、摩耶姉ちゃんの口元が、うれしそうにニコリと笑っていた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ