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俺の涼風 ぼくと涼風
2. きっかけは紙飛行機
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縦回転の軌跡を描く紙飛行機は徐々に高度を下げていき……

「……!?」
「……!?」

 やがて地面に墜落し、機首を地面に見事に突き刺していた。その瞬間は、まさにテレビのバラエティー番組で聞くような、大げさな『ブシャッ!?』という音が聞こえてきてもおかしくないような、そんな見事な突き刺さり方だった。少年はその一部始終を、がっくりと肩を落としながら眺めていた。

「……」
「……ぷっ」

 あまりに見事な突き刺さり方だったため、私は少年が三階から見下ろしていることも厭わず、つい吹き出してしまう。少年が私に気付いたようだ。眉間にシワを寄せ、憤りと気恥ずかしさを抱えていたのが、私からもよく見えた。

「な、なんですかっ」

 少年というには、あまりに優しい……でも、私の耳に届く、よく通る声で、彼が私に抗議をしてきた。風が強く吹き、桜の木からざわざわという音が鳴った。少年は寒そうに、カーディガンを羽織るその身体を、少しだけ縮こませた。

「わるいわるい。別に笑うつもりじゃ……ぷっ」
「笑ってるじゃないですかっ」

 不躾な私の笑いが気に入らないのか、ぷんすかという文字を頭の上に浮かべ、彼は私に必死に抗議してくる。そういえば、何かが可笑しくて吹き出したなんて、いつぶりなんだろう。クスクスと笑いながら、そんなことを考えてしまう。

「なー。紙飛行機、好きなのかー?」
「い、いや、えっと……」
「なんだよー。好きでもないのに、あんなに真剣に飛ばしてたのか?」
「本で『よく飛ぶ紙飛行機の作り方』ってのを見たから、ちょっと飛ばしてみようかなって思って」
「ふーん……」
「あなたは……艦娘なんですか?」
「おーう。涼風ってんだ。よろしくなー」

 彼の丁寧な質問に対し、つい元気よく返事してしまった。でもなんだか心地いい。ずっと感じることのなかった、胸に心地いいワクワクを、私は今、随分と久しぶりに感じることができていた。強い風が再び吹いた。桜の木のざわざわという音が大きくなり、私の肌に心地いい冷たさを届けてくれた。

「涼風さん……改白露型駆逐艦の、涼風さん……ですか?」
「うん! あたいのこと、よく知ってんなー」
「勉強、しましたから」
「そんなに丁寧に話さなくていいって! あたいのことも呼び捨てでいいから!」

 伏し目がちな少年のほっぺたが赤くなった。落ち着かないようにポリポリと頭をかいた彼の姿に、なぜかワクワクが止まらない。

「そ、そっか……」
「うん! ところで、あんたは?」
「へ?」
「名前!」

 この、不思議でちょっとおかしい、ワクワクの止まらない少年のことを、もっと知りたい……この少年と、もっと色んな話をしてみたい。そう思った私は、戸惑ってほっぺたを真っ赤にしている彼に、名前
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