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俺の涼風 ぼくと涼風
2. きっかけは紙飛行機
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ている。汚れらしい汚れはまったくついてない。私はフと、その新しい宿舎を見上げた。

 宿舎の最上階の三階の一室の窓が開いている。

 朝に提督が言っていた、『新しい仲間』の部屋なのかな? まだ提督からみんなへの紹介はないけれど、ひょっとしたら、すでに到着して部屋にいるのかも知れない。そう思い、私はその開かれた窓をジッと見た。

 窓に備え付けられたカーテンが、潮風を受けて、パタパタと気持ちよさそうになびいているのが見えた。構わず眺めていたら、その窓から、一人の少年が身を乗り出した。

「……?」

 パジャマのようにも見える素っ気ない純白の部屋着の上から、クリーム色のカーディガンを羽織ったその少年は、私と同じぐらいの年齢に見えた。キレイな茶色の髪の毛を女の子のようにおかっぱに整えているその少年は、距離が離れている私からも分かるぐらい、真剣な表情で身を乗り出し、自身の右手を中空に伸ばして、手の平を広げてゆらゆらと動かしている。右手で風の強さを計っているようにも見えるが、ホントのところはわからない。

「……なにやってんだろ?」

 少年の不思議な行動に興味が湧き始めた私は、本人が気付いてないのをいいことに、しばらく彼を観察することにした。しばらくの間右手で風の動きを探っていた少年は、風が弱くなると力強くうなずき、窓から姿を消した。

「?」

 かと思えば、少年は再び窓のそばに戻ってきて、身を乗り出す。何かをつまんでいるらしい右手を窓の外に伸ばし、肘を曲げ、至極真剣な表情で、妙な構えを取り始めた。

 彼が右手に持ち、構えているものをジッと見つめる。あまりに小さく距離も離れているため最初はよく分からなかったが、あれはどうやら、折り紙で作った紙飛行機のようだ。少年は、紙飛行機を飛ばすつもりらしい。それも、風を読んでベストなタイミングを測るほど、真剣に遠くまで飛ばそうと考えているようだ。

「……」

 紙飛行機を構える右腕の肘を何度か曲げたり伸ばしたりして、紙飛行機を飛ばすタイミングを計っている少年。下で自分のことを観察している私の存在に気が付かないほど、彼は真剣なようだ。

 風が弱くなり、ほぼ無風になった。風の冷たさを感じることができなくなり、お日様の温かさが私の肌にダイレクトに届いたその次の瞬間。

「……ッ!」

 少年は意を決し、右手に持った紙飛行機を勢い良く飛ばした。少年が飛ばした紙飛行機は、ものすごい速さで機首を下げ、真下に向かってストーンと高度を下げていく。

「……!?」
「……!!」

 かと思えば、紙飛行機はそのまま再び機首を持ち上げ、ものすごいスピードで高度を上げ、そのままくるくる縦回転を始めた。あんなに変な飛び方をする紙飛行機は、見たことがない。そのままぐるんぐるんと
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