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俺の涼風 ぼくと涼風
2. きっかけは紙飛行機
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た。

 そして。

「バーカ」
「あだっ!?」

 摩耶姉ちゃんは、箸を置いたその左手で、私の頭をスパーンと横殴りにひっぱたいた。

「なにすんだよ摩耶姉ちゃんっ」
「お前はな。そんなこと気にしなくていいんだよっ」
「だってさ……」
「お前は自分が悪いって思ってるみたいだけどな」
「……」
「悪いのはお前じゃなくて、あのクソだ。お前は傷つけられた側なんだから」

 いつの間にやらお茶碗もテーブルの上に置いていた摩耶姉ちゃんは、右手を腰にやり、左手で私をビシッと指差して、そんなことを言ってくれた。

「それに! お前がそうやって元気がないと、みんなが犬死になっちまうじゃんかっ!」
「……」
「あれだけのことだ。忘れろなんて言わねーけど、いい加減、立ち直れって」
「うん……」

 当然の指摘を受け、私は窓ガラスを見た。窓ガラスには、外の風景にまぎれて、私自身の姿が反射して写っている。最後に心から笑ったのはいつだったろうか。必死に思い出したが、ついに思い出すことは出来なかった。自分がどんな顔で笑っていたのかすら忘れてしまった私の顔の目の下には、うっすらとクマができていた。

 不意に、『カンカンカン』という、金属が叩かれた甲高い音が鳴り響いた。ビクッとして音が鳴った方を見ると、いつの間にか食堂に来ていた提督が、お玉でフライパンをカンカンと打ち付けている。

「みんな、おはよう!」

 白い上下の制服に身を包んだ提督が、笑顔で私たちに挨拶をしてくれる。私にとって二人目の提督は、以前のあのヒトと違って、仲間思いの、とても優しい人だ。以前の鎮守府の破棄が決定したとき、私と摩耶姉ちゃんと榛名姉ちゃんの3人を引き取ると言ってくれたのが、あの提督だ。

 本人が言うには、提督には息子さんが一人いるそうな。奥さんもいたそうだが、すでに亡くなっているらしく、その話を聞いた一部の艦娘の鼻息が荒くなっていたと、以前に摩耶姉ちゃんに聞いたことがある。

「今日の予定を発表するから聞いてくれ! 第一艦隊は南西海域の制圧に向かう! 第二艦隊と第三艦隊は遠征任務についてくれ! 第四艦隊は、いつもの通りオリョールだ!!」

 提督の今日の予定の発表を受け、一部のテーブルから『きょ、今日もいくでちッ!?』『ふぁぁぁああ!?』『過重労働なのねッ!?』という阿鼻叫喚が聞こえてきた。見ると、そのテーブルには潜水艦のみんなが座っている。キャッキャキャッキャとはしゃいでいるのはろーちゃんだけみたいだ。食堂内に、クスクスという笑い声が響いた。

 私と摩耶姉ちゃんは第三艦隊だから、今日は遠征任務か。もっとも、私はこの鎮守府に来てから、遠征任務しかしたことないけれど。戦うことが出来ない今の私に出来るのは、遠征任務ぐらいだ。

 榛
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