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俺の涼風 ぼくと涼風
2. きっかけは紙飛行機
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て、味噌汁がこぼれてしまったお盆を再び手に取り、榛名姉ちゃんは私たちを振り向くこともせず、食堂の奥に向かってツカツカと歩いて行く。

 反射的に、その背中を追いかけたい衝動にかられた。以前は誰に対しても優しく、私に対しても笑顔を絶やさなかった榛名姉ちゃん。今はもう、私には憤りの感情しか向けてくれなくなったけれど、私は以前のように、榛名姉ちゃんと楽しく話をしたかった。

「は、榛名姉ちゃん……」

 榛名姉ちゃんの背中をフラフラと追い駆けそうになる私の肩に、摩耶姉ちゃんの手がぽんと置かれた。途端に我に返り、私は榛名姉ちゃんの背中をもう一度見る。

――私に近づくな

「やめとけ涼風」
「でもさ……」
「あいつもさ。お前は悪くないって、きっと分かってんだよ」
「……」
「でもさ。分かってるのと納得するのは違うからさ。アタシみたいに納得するには、もうちょっと時間がいるのさ」
「うん……」
「いいから、さっさと食おうぜ」

 摩耶姉ちゃんにそう促され、私はたった一人で朝食を摂り始めた榛名姉ちゃんに背中を向け、摩耶姉ちゃんと一緒に、窓際の席に座った。背中に感じる榛名姉ちゃんの雰囲気に、後ろ髪をひかれるような感覚を覚えながら、私は摩耶姉ちゃんと共に『いただきます』と宣言し、朝食を摂った。

 榛名姉ちゃんは、摩耶姉ちゃんと同じく昔からの仲間だ。今でこそ、私と目が合うたびに怒りをぶつけてくる榛名姉ちゃんだけど、昔はとても仲がよかった。よく姉の五月雨と一緒に、榛名姉ちゃんや金剛型のみんなと、遊んでもらったっけ。

 榛名姉ちゃんが変わったのは、金剛型の金剛さんと比叡さんが沈んだ、あの時だ。あの時以来、榛名姉ちゃんと私は、険悪な関係が続いている。

 窓の外の海を眺める。外しとてもいい天気で、東向きの窓からは、お日様の気持ちのいい日差しがさして、私と摩耶姉ちゃん、そして榛名姉ちゃんを暖かく包んでくれている。海がお日様の光をキラキラと反射して、外の景色はキレイで、そして明るく輝いていた。

「なー。摩耶姉ちゃん」
「あン?」

 私が声をかけた時、摩耶姉ちゃんは、ちょうどだし巻き卵に箸を伸ばしていた。その箸がピタリと止まり、摩耶姉ちゃんのキレイな瞳が、私をジッと見据えた。

「……あたいさ。どうすればいいのかな」

 あの鎮守府を離れてここに来てから今日までずっと、私の心の中に漂い続けている疑問が、ぽろりと口をついて出た。4人のかつての仲間たちの命の上に立たされた自分は、どうすればいいんだろう。私は、どうすれば許されるんだろう。

「……」

 真剣な真っ直ぐな眼差しで、私をジッと見ていた摩耶姉ちゃんは、そのまま箸でだし巻き卵を自分の口に持ってくる。それを口に入れ、もぐもぐと咀嚼した後、箸をお盆の上に置い
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