2. きっかけは紙飛行機
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に、やっぱり朝食が乗ったお盆を手に持った、榛名姉ちゃんがいた。
「榛名姉ちゃん……」
「……」
一瞬、気まずい表情を浮かべた榛名姉ちゃんは、次の瞬間、非難と敵意がこもったような鋭い眼差しで、ただ私を、ジッと見つめ続けた。
「……お、おはよ」
こちらの胸に痛く突き刺さってくる眼差しに耐えられなくて、私は榛名姉ちゃんに挨拶をする。榛名姉ちゃんの目はとても怖くて、見ているだけで恐怖で身体が震えてきた。私が持つお盆の上のお味噌汁が、私の身体の震えに合わせて零れそうに波打っている。なんとか震えを止めたいが、榛名姉ちゃんの目が怖くて怖くて、震えが止まらない。
そんな私の様子をジッと見ていた榛名姉ちゃんは、呆れたように鼻を鳴らした後、私に背中を向けた。
「……話しかけないで下さい」
全身から渾身の拒絶の意思をにじませて、榛名姉ちゃんは私にそう答えた。榛名姉ちゃんは私に背中を向けていたから、その時姉ちゃんが、どんな表情を浮かべていたのか、私には分からない。でも声色からは、榛名姉ちゃんの憤りが、はっきりと聞き取れた。
「おい榛名さんよお」
「……」
私の隣で一部始終を見ていた摩耶姉ちゃんが、榛名姉ちゃんに声をかける。摩耶姉ちゃんの呼びかけを受けた榛名姉ちゃんはピクリとして立ち止まったが、こちらに顔を向けてくれない。どのような表情であれ、私に向ける非難の気持ちは変わらないんだろうけど。
「いい加減にしろよ。涼風は悪くねえだろ?」
「……」
「同じ鎮守府で過ごしてきたアタシだ。お前の気持ちも分からなくはないけどさ」
摩耶姉ちゃんが悪気がないのは分かってるし、私のことをかばってくれているのも分かる。でもその一言は、ほんの少しだけ、私の胸にチクッと刺さった。
「でもさ。こいつもあのクソの被害者じゃんか。お前もそれ、わかってんだろ?」
摩耶姉ちゃんの静かな声が、食堂に響き渡る。周囲の仲間の視線が痛い。やがて食堂内の喧騒が止み、いつの間にか摩耶姉ちゃんの声だけが、静まり返った食堂で鳴り響いていた。
摩耶姉ちゃんの言葉を受け、榛名姉ちゃんの背中が、ワナワナと震え始めていたのが分かった。確かに摩耶姉ちゃんの言葉は、私の事を気遣ってくれる言葉だが、それは同時に、私に怒りを抱いている榛名姉ちゃんにとっては、どうやら逆鱗を逆撫でする言葉でしかないらしい。榛名姉ちゃんは、そばにあるテーブルにガシャンと乱暴にお盆を置いて、私たちに背中を向けたまま、両手の拳を力いっぱい握りしめていた。
「……仲間が沈んだんですよ? 姉妹を殺されたんですよ?」
「だからさ。それはこいつが悪いんじゃなくて……」
「張本人なんかと、仲良く出来るわけないじゃないですかッ」
テーブルに激しくたたきつけられ
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