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歌集「春雪花」
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 月もなく

  雲に隠るる

   きみゆゑに

 憂きに絶へなむ

     わが涙かな



 月影はなくツキもなく…恋しくても温もりはなく…。

 自分を哀れに思うほど虚しいことはあるまい…。

 雲が空を隠すように…彼もまた隠されたまま…。
 天に願うも…雲の向こうでは届くまい…。

 この現は憂いばかりで、堪えようとも涙は流れる…。


 ならば、この一時は彼を想い…ただ流れるままに…。



 振り向かば

  空になびくは

   竹の葉の

 音なき風に

    君そ恋しき



 ふと…何かがざわつく音がして振り向くと、竹が風に揺られていた。

 然して風も吹いていないと思っていたが…高い所では吹いてるらしい。

 風は音もなくこうして竹をざわつかせる…彼は何の便りもなく私の心をざわつかせるのだな…。


 あぁ…彼が恋しくて堪らない…。




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