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第五章
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「これだけならよくある話ですね」
「全くだな」
 その通りだとだ。役も本郷に応える。三人で一つの席にそれぞれ向かい合って座っている。
 その中でだ。こう言うのである。
「しかしだ。やったことがだ」
「それが問題ですね」
「まさに」
「その通りです」
 役は宮里の顔を見て言葉を返した。
「これからです。しかし」
「そうですね。普通こうした事件を起こすっていったら」
「若い男ですね」
 本郷と宮里はこう役に返した。
「けれど今はお爺ちゃんですかあね」
「そこが違いますね」
「はい、そこが違いますね」
 役も言う。
「本当に」
「とりあえずです」
 宮里は精神科医らしく冷静に述べていく。
「犯人、患者でもありますが」
「その話を聞いていきますか」
「今は」
「そうしましょう」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 三人はその犯人、裕福な老人の話を聞くことにした。まずはその老人の経歴を本人から聞くことにした。そうして聞いていて三人が見たものは。
 老人は視線が定まっていない。虚ろな目をしている。
 そしてその虚ろな目で語る言葉もだ。実に抑揚のないものだった。
 その抑揚のない言葉でだ。老人は三人に語った。
「指が好きなんだよ」
「何故好きなんですか?」
「あれの指だからね」
 老人は診察をする宮里に語る。
「女房の指だからね」
「奥さんの?」
「ほら、そこにいるじゃないか」
 あらぬ方を指差しての言葉だった。宮里の左隣だ。
「そこにね。ちゃんといて」
「奥さんが言っておられるのですか?」
「いや、女房の指がないんだよ」
「奥さんの指が」
「そうだよ。ないんだよ」
 あらぬ方を指差しながらの言葉だった。
「それで指を欲しい欲しいって言っててね」
「奥さんが指を欲しがっているのですか」
「そうだよ。女房の指は奇麗だったんだ」
 こう言っていく。虚ろな顔で。
「だから指をあげないといけないんだよ。女房に」
「しかし貴方は指を」
「指をどうしたっていうんだい?」
「お部屋に飾っていましたね」
 率直にだ。老人に彼のその犯行について問い返した。
「そうされていましたね」
「わしが?部屋に?」
「そうしておられましたね」
「指が合わないんだよ」
 老人は今度はこんなことをだ。宮里に言ってきた。
「女房に。指が」
「指が合わない」
「そうだよ。それにわしは指が好きなんだ」
 抑揚のない言葉はそのままだった。
「女房の指は奇麗だよ。それで指を」
「腐らない様にされてから」
 こう言われるとだ。老人は。
 急に笑いだした。そしてこう
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