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真田十勇士
巻ノ九十八 果心居士その十七

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「幕府、大御所様かな」
「豊臣家ですか」
「お拾様ですか」
「そうした家でなければ黒田様が言われる」
 後藤と袂を分かった彼がというのだ。
「召し抱えぬ様にな」
「それこそ幕府か豊臣家でないと」
「そうなりますか」
「うむ、だからわしが思うにじゃ」
 服部は家臣達にさらに考える顔で述べた。
「幕府はじゃ」
「後藤様をですな」
「迎え入れるべき」
「そうだというのですな」
「そうじゃ」
 その通りというのだ。
「若し豊臣家に仕官されれば厄介じゃ」
「それで豊臣家が勢い付き」
「幕府にさらに従わなくなる」
「そしてそうなれば」
「戦になるやも知れませぬな」
「だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「豊臣家に仕えてもらっては困る」
「それではですな」
「今のうちに、ですな」
「大御所様にお話されますか」
「そうされますか」
「うむ」
 是非にと言うのだった。
「そうしよう」
「はい、それではです」
「是非お願いします」
「殿が大御所様に申されて」
「その様にされて下さい」
「ではな、すぐに申し上げよう」
 こう言って実際にだった、服部は家康に後藤のことを話す為に彼の前に参上することにした。幕府そして何よりも天下の為に。


巻ノ九十八   


                       2017・3・9
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