第七話 自分らしく駆け抜ける
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いた。そうしなければならないと理解していたのだ。
敵意を感じたのか、タコ型ノイズが触手を振るう。対する鳳が取った行動は腕を盾にしての防御。
衝撃。だが、自分の身体が炭素へと昇華することはなく。
やりあえていた。人類の天敵と三十秒以上も向かい合える。
がら空きのボディ。チューンフォーカーのグリップをしっかりと握り締め、狙いを定める鳳。
(長かった……)
黒服に命を助けられ、後ろにいる少女に命を助けられ、風鳴翼に、そして今は父親に。
口だけではいけないことを知った、行動だけではいけないことを知った。未来へと繋ぐことは、どちらかだけではいけないことを知った。
ならば、もう怯えることはない。
――自分は今、自分らしく駆け抜けるッッッ!!!
「らああああッ!!」
言葉に出来ない想いを歌に換えて。『ORBITAL BEAT』のサビを歌いながら叩き付けるはチューンフォーカーのナックルガード。
殴った箇所が炭素となる。ノイズにダメージを与えた。その絶対的な事実すら、この瞬間の鳳にはさして目もくれる必要のない些末事。
続いてもう一発殴打したところで、ノイズが距離を開けるために後退を始めた。
「サビが終わりそうなんだ、付き合えよッ!」
上段の銃口に収束される鮮やかな桜色のエネルギー。左手を銃床に添え、しっかりと狙いをつける。
チャージが完了したと知らせるように一段と大きくなる輝き。
《バスター、発射》
女性の合成音声がそうアナウンスすると、今か今かとその時を待っていたエネルギーが地を鳴らさんばかりの轟音と共に解放された。
一直線に向かう奔流は即座にノイズを飲み込み、そしてもう何も存在していなかった。
「貴方、何者……?」
鳳は背中を向けたまま、言う。それが当たり前の事実なのだから、今更目を向けて言う事でもない。いつまでもいつまでも、同じことを言い続けてやる。
「俺は鳳郷介。あんたを守りたいと思った男だ!」
手には力、胸には歌。だったら、命を繋ぐために走らぬのは道理ではないだろう。
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