第七話 自分らしく駆け抜ける
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凪琴は小さなため息と共に、胸のペンダントに手を掛ける。
戯れに付き合ってみたは良いが、もうこれ以上何もこの男から見られる物はない。そう、凪琴は結論付けた。
少しだけ男を見て、自分は何に期待していたのだろうとすぐに目を逸らす。思春期にありがちな病を患ったつもりはないが、それでも力を持たぬただの人間が一体何を見せてくれるのかと期待をしてしまったのだ。
(……期待、何故?)
胸に浮かぶ歌、凪琴がソレを紡ごうとした時、鳳が一歩前に踏み出した。
「……」
「やめてください。もう、見るに堪えない」
それには答えず、鳳はノイズへ再び銃を構える。
沢山走り、汗と共に余計な感情を流しきった鳳は妙に思考がすっきりとしていた。
静かな気持ちであった。弦十郎からの厳しい特訓を経て、だいぶ感情を揺さぶられることも無くなったとタカを括ってみればあのザマ。
だが、まだ気持ちに波紋が起きる。鎮めるにはどうする。
ああ、そんなものは“とっくの昔に”知っている。
「――――――ッ」
「これは、歌?」
凪琴の鼓膜を揺らす音、否、歌。この歌は知っている。両翼双羽の歌姫二人組『ツヴァイウィング』のナンバー『ORBITAL BEAT』。
何故、今このタイミングで。
まさか――凪琴はその“まさか”の可能性に目を見開く。
「『死にたくなりそうな時にこそ唄え。そうすれば自ずと道は開かれる』」
「え?」
「父さんが良く言っていた言葉だ。ああ、そうなんだよ。ブルッた時も、泣き出しそうな時も、戦わなければならない時も、どうすれば良いのかだなんて、最初から――教えてくれていたッ!!」
それを合図にしたかのように、ノイズが飛び掛かって来た。同時に鳳もチューンフォーカーを握り締め、走り出す。
「おおおおおおッッッ!!!」
打撃音。ノイズの躰にぶつかるチューンフォーカー。
――瞬間、鳳の腰に装着していた『BC2形成装置』が輝きを放つ。
「これは……ッ!」
凪琴は思わず声を漏らしていた。
そこには銃を持っている方の腕が灰と白色の籠手に覆われている鳳がいたのだから。
「変われるッッ!!」
言いながら右腕を引き、左腕で殴りつける鳳。インパクトと同時、BC2形成装置の光が収束し、右腕と同じ籠手が装着される。
勢いは止まらない。左脚の回し蹴り、右足の蹴り飛ばしで四肢に鎧を纏い終えた。
それが最後のトリガーだ、とでも言いたげに四肢の鎧が発光し、頭とそして胸部を包み込む。
「このぉッ!!」
ヘッドギアに胸部と四肢の装甲。見た目だけで語るなら、それはまるでシンフォギア装者とでも言うかのように。
鳳はほぼ本能でノイズに向かって
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