第七話 自分らしく駆け抜ける
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したかマリア」
「やはり、と言うことは私が何を言いたいのか分かっているってことで良いのね?」
「ええ。でなければ、貴方達に言葉を出す訳にはいかないのですから」
「だったら単刀直入に聞かせてもらうわ。何故、凪琴だけを行かせたの!? 調や切歌、何なら私だって……!」
マリアは少しばかり腸が煮えていた。
今回は抵抗の気力を削ぐためにノイズを軽く“遊ばせる”だけと聞いていた。だが、あの場に凪琴まで居合わせているのは聞いていない。何より、そんな理由は無いはずだろう。それが、今回マリアが詰め寄る理由となった。
「凪琴は大事な切り札と、そう言ったのはマムとそしてウェル博士のはずだ!」
「そうです。そして同時に、堅実に切れるカードとも言えます」
「っ……! 時限式に比べて潰しが利くから、それは重宝するのだろうけど……!」
火種を蒔いたのはナスターシャ。そして、それを消すのもまたナスターシャであった。
「落ち着きなさいマリア。仮にも貴方は世界に対し、旗を揚げた者。この程度で身震いをしてどうするのですか」
「……凪琴にはどんな任務を与えたの?」
「ノイズによる破壊活動を見守るようにと、そう言いました」
「そんな事だったら……」
「そんな事、ですか」
そこでマリアは言葉をあえて切った。切らざるを得なかった、というのが正しいのだろうか。
ああ分かっていた。そんな事は百も承知であった。
『LiNKER』頼りの虚勢を見せる三人に対し、凪琴は唯一の先天的適合者。だからこそ、自分でも調でも切歌でもなく、凪琴が選ばれたことなんて痛いほど分かっていた。
「仮に、敵の装者が来たら貴方はどうしていましたか? 無論、仕方ない時は仕方ないです。ですが、常にフルスペックを維持しつつ、逃げ切れる装者は凪琴しかおりません。だからこそ、気兼ねなく送り込めるのです。しかしそれは――」
「分かっているわ。ええ、分かっているとも……」
「実際、凪琴が我ら『F.I.S.』に来てくれた時に抱いた感情は僥倖中の僥倖」
その言葉を、マリアが引き継ぐ。
「だからこそ、凪琴は懐に忍ばせる短刀にして戦場で振るう野太刀としなければならない。……そうよねマム」
「ええ。そういう事です。その考えを遵守するため、切歌を向かわせました」
「切歌を?」
「万全には万全を、ということです」
だからこそ、自分たちのマムなのだ。そう言いたげにマリアは口角を吊り上げた。
◆ ◆ ◆
逃走劇、と言うには余りにもお粗末。
黙りこくる凪琴を無理やり走らせ、逃げに逃げた先は壁。逃げ場はない死の袋小路。
自分達を嘲笑うようにやってきたタコ型ノイズが一匹。たった一匹とはいえ、それは死の象徴。
(……そろそろ頃合いですか)
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