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武装少女マキャヴェリズム〜東雲に閃く刃〜
第一話 夜明け前の茜色
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 腰の鞘に納めるかのような構え。そこから丹田に気を溜める。己が研鑽し続けてきた流派には、時に多対一という絶望的な状況も想定されていた。
 状況によっては苦し紛れも良い所。しかし、そのような状況も打開しうると確信され、紫雨の剣術は研ぎ澄まされてきた。


「東雲一刀流――複式六の型」


 大振り。線引くような横一閃にほんの一瞬。ほんの一瞬だけ気を取られた隙。その度し難い隙を突くのがこの東雲一刀流の真骨頂。
 まずは手近な女子の手の甲、そして喉を打つ。次に足を打ってからの顎。そして最後の女子には、手の甲を打ってからの切り上げ。
 二撃。複数相手に対し、手近な相手から確実な二撃を入れ、次の相手へまた二撃を入れる。対応する時間と、次の相手へ移るための時間を鑑みての最善中の最善。

 これぞ多対一の戦闘を想定した東雲一刀流複式六の型――『朧雲』。

 技の優美さも精密さもない。“生き残る”と言うことを主軸に据えた生存の為の剣。だが、その生き汚さは何物にも勝る。

「……ほう」

 斬り荒ぶ紫雨を見て、鬼瓦輪が興味深げに吐息を漏らす。

「貴様、名は何という?」
「東雲一刀流、東雲紫雨」
「東雲……?」

 その名に、鬼瓦は確かに聞き覚えがあった。


 ――東雲一刀流。


 彼の時代、死骸で城を作り上げたと言われる剣客、東雲玄羽(げんぱ)が開祖とされる剣術流派。時の将軍お抱えの剣客であり、主に暗殺の任務を命じられていたという性格上、『確実、不可避』の攻撃を絶対としている。
 抜刀術の主軸に、あらゆる苦難の状況を想定された剣法は、殺人剣でも、そして活人剣でもなくもはや――――。


「生き残り、果たすべくを果たすために練磨されたこの剣は、今のこの理不尽を打開するための鐘なり」


 三人を倒した。それはもう言い訳も何もなく、ただのありふれた“戦線布告”なのだ。本来、そんな真似など絶対に行わないのだが、この理不尽を目の当たりにしてはそのよう正常な判断など出来はしない。
 否。むしろ沸騰に沸騰した上で、冷を被り、頭をさっぱりさせたからこそ出来た行いなのかもしれない。
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