第一話 夜明け前の茜色
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り身体を触りはじめる。
「うぉっ!? ちょ、あんた何やってんの!? 朝っぱらからおっぱじめる趣味は俺にはないぞ!」
「安心して。私もそんな趣味はない」
言いつつ、ベタベタとそれはもうベタベタと。逆セクハラと称されてもなんら反論出来ないくらいにねっとりと触診をする紫雨。
身体、特に足回りを念入りに調べてみてよく理解した。剣士ではない。そして、やはり一般人でもない。否、訂正しよう。この男は――。
「――無礼を詫びたい」
「それは、何に対してだい?」
「過酷な訓練をしたのですね」
「生憎と、もうそういうもんとは何ら関係ない身分なんだ」
それ以上は紫雨も心得ていた。人には言いたくないことが山ほどある。今回、その地雷を踏んでしまった事。ならば、丁重に足を踏み外す以外ない。
「そういうおたくは?」
「意味が分かりかねる」
「恍けんなよ〜。あんたの眼と、今楽しげに登校している武装女子達の眼と、ぜーんぜん違うんだよねぇ」
「……目つきが悪いと言われているようで、少々傷つくというのが正直な所だ」
「おいおい、そう捉えるなよ。個性としては一級品だってことを言いたかったのよねぇ」
どうやら化かし合いには向こうに一日の長があるらしい。踏み込んだつもりが、逆に踏み込まれてしまっていたようだ。しかして不愉快ではない。
謎の魅力だと、皮肉抜きで思う紫雨。
――刹那、東雲紫雨を射貫く眼光有り。
「――ッ」
「うん? どした? パパラッチでもいたのかい?」
「そちらの方がまだ歓迎出来たのだけど……」
校舎の高い方、あれがどの部屋なのかは分からないが。明らかに感じた視線。確実にこちらを見ていたと言える。そして少々の不覚をしたのもまた事実。
「……反応しない方が良かったか」
「もーしもーし? 視線がお空へ行っちゃってますよ〜」
そこから歩くこと数分。ようやく職員室へ辿り着いた二人は、担任の教諭からまだHRへ行く準備が出来ていない旨、話をされてしまう。
だったらと、納村は先に教室を出て行ってしまう。
「あっ行っちゃった……! 男子だからまずは私が付いていってあげないとと思ったのに!」
「先生、それはどういう意味ですか?」
「えっとね……」
◆ ◆ ◆
「……見取り図だとこの辺り」
『2−13』。ここが自分の教室にして、納村の教室。
この胸の内に灯る不安が現実となっていないように祈りながら、紫雨は扉を開いた。
その光景を何と例えようか。多対一。鬼の面をした女生徒を先頭に、皆が武器を納村に突き付けている。
納村と目が合い、そして鬼面女子と目が合った。
「何者だ? ……と、そうかそう言えば今日転入してくる者は二名だったか。
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