第六話 退かぬ意志は引き金となり
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は鳳の前に立ちはだかっていた。
「行かせるわけにはいかん」
「何故!?」
「理由は先刻言った。今の君ではただ犬死にするだけだ。そんな事を、俺は認める訳にはいかない」
「俺に力が無いから、か」
「分かっているのなら――」
「だからただ指を咥えて見ていろだなんて恥ずかしい真似をするぐらいならばッ! 俺は死んでやるッ!!」
「郷介君!」
拳の代わりに突き付けたのは、繋がれた命の結晶とでも言えるチューンフォーカー。
「俺はただ命を捨てるために行くんじゃない、繋げる命を繋ぐために俺は往くんだッ!!」
弦十郎を横切り、鳳は駆ける。もう自分が嫌いにならないように、自分の弱さが嫌いにならないように。
追ってはこなかった。弦十郎の身体能力ならば自分を再び捕まえることなど容易いことだろうに、それでも。
「絶対にッ!」
自分を信じて送り出してくれた弦十郎の視線を裏切りたくは無かったのだ。
「避難は終わっているのか……なら」
リディアンに置いてあった事務員用の自転車を使い、現場へ急行した鳳。大きく火をあげるデパートを見上げ、周辺を調査することに決めた。
逃げ遅れている者が万一にでもいれば、そう考えざるを得なかった。
両隣の建物にも火は移っている、そして――僅かに自分の足を竦ませる相手が。
「あれはノイズか……!」
デパート上空を飛び回るのは鳥のような姿をしたノイズ。その数は六、と言ったところ。まだいるのかもしれないが、出来ればあれらで打ち止めであってほしいのは心から願う所。
たった六匹とはいえ、触れれば比喩表現抜きで即死するという悪魔の地雷。
幸い、まだこちらには気づいていないようだ。この隙に距離を取り、逃げ遅れた人がいないか確認を完了する。
そう考えていた鳳の視界に、見覚えのある少女の姿が飛び込んできた。
「……こんな意義を見失った作戦を見守る役目を与えられるとは」
「嘘だろ……おいあんた、あの時の子か!?」
「……え?」
振り向くと、セミロングの茶髪とおさげが揺れる。間違いなかった。
マリア・カデンツァヴナ・イヴが世界へ宣戦布告をした時に現れたあの灰色の鎧――シンフォギアを纏う少女である。
「貴方は? 一体どなた様でしょうか?」
首を傾げ、そういう彼女はとても冗談など言っているような雰囲気には見えなくて。
自分だけが覚えている。その事実が少しばかり鳳の胸を痛めた。
「名乗っている時間すら惜しい! さっさと安全な所へと行くぞ!」
「な……!」
手を引き、ノイズとは逆の方向へ走り出す。絶対に振り向けない。ノイズ達が気づいたようで、二匹ほどこちらへ向け、羽らしきものをはためかせる。
少女が声を上げる。
「手を離して
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