その1
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「まる子」ことさくらももこは学校へ向かっていた。その時、誰かが後ろから呼んだ。
花輪クン「Hey、Good Morning、さくらクン」
まる子「花輪クン!?今日ヒデじいはどうしたの!?」
花輪クン「ヒデじいは娘の春子さんと亡くなった奥さんのお墓参りに行っているのさ」
まる子「そっか、ヒデじいの奥さん亡くなってるんだったね」
花輪クン「ヒデじいは僕が生きる希望だと言っていたけど、家族は誰だって忘れられない大切な存在だからね」
まる子「そうだよね・・・。ヒデじいもいい家族持ったね。ウチの家族は大切だと思えるのがおじいちゃんしかいないよ・・・。お姉ちゃんもお母さんも意地悪だし、お父さんはいつもビールとタバコと釣りと野球しか頭にないし、だらしないしさ・・・、おばあちゃんはまあまあかな」
花輪クン「親になかなか会えない僕よりはマシだと思うけどね・・・」
逆にそんな賑やかな家族を羨ましがる花輪クンであった。そのころヒデじいは、娘、春子の家に行っていた。
ヒデじい「久しぶりだな、春子」
春子「お父さんも元気でよかったわ。お父さんが世話をしている和彦君も元気にしている?」
ヒデじい「ああ、坊ちゃまなら元気でいるよ」
春子「そうなんだ、ウチの旦那も、中学生の娘と小学生の息子も元気でやっているわよ。お母さんも私たちを見てきっと元気だから喜んでいるわよ」
ヒデじい「そうだな。それではそろそろ母さんのお墓へと向かうか」
春子「ええ」
ヒデじいは愛車のロールス・ロイスに娘を乗せてトシ子の墓へ向かった。
ヒデじいと春子はとし子の墓に佇んだ。ヒデじいは墓石に水をかけ、線香を焚き、二人は手を合わせた。
ヒデじいはあの時、つまりトシ子との日々を思い出していた。
花輪家でトシ子と出会い、恋に落ちたこと、貯蔵に高価な壺を割った犯人にされたこと、トシ子と結婚し、娘春子が生まれたこと、そして出征して、危機一髪にあったこと、そして、復員してトシ子、春子に再会できたこと、春子が嫁に行き、トシ子が肺炎で亡くなったこと・・・。
ヒデじい(トシ子・・・。そちらは元気にしているのかね?こちらの世界では私も春子も元気でやっている。お前が亡くなってもう10年か・・・)
と、その時、ヒデじいには何かが聞こえてきた。
ヒデじい「?」
これは本当に聞こえたのか。それとも空耳か。春子に問うた。
ヒデじい「春子、今何か聞こえなかったか?」
春子「何も聞こえてないわよ」
ヒデじい「そうか、やっぱり空耳だったのかな」
しかし、また何かが聞こえてきた。
?「・・・・・・あなた」
ヒデじい「・・・?」
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