第十五話 沼の屍竜その三
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「他の木だっていいけれどな」
「その木がどうした木でか」
「燻製の味も変わるしな」
「さっき話した煙の加減とかでか」
「やっぱり変わるんだな」
「よくもなるし悪くもなるんだよ」
その味がというのだ。
「それでこの燻製はな」
「この通り美味いか」
「これまでこの世界でよく作ってきたからな」
智は笑って久志に話した、その燻製を食いつつ。
「こういうこともわかってきたんだよ」
「経験か」
「ああ、何度も何度も作っていてな」
そうしてきてというのだ。
「この味に至ったんだよ」
「そうか、何度も作っていてか」
「これに至ったんだよ」
「成程な」
「もっとも至ったっていってもな」
「まだだよな」
「これに満足しないでな」
また笑って久志に話した。
「もっと美味い燻製作るぜ」
「その燻製食うの楽しみにしてるぜ」
「ソーセージでもハムでもベーコンでも作られるからな」
燻製の中でも有名な種類であるこうしたものもというのだ。
「食うの楽しみにしておけよ」
「その言葉受けたぜ」
「ああ、じゃあな」
「その時楽しみにしてな」
「待っておくな」
こうした話もしつつだ、三人は沼地に行くまでの最後の夜を過ごした。そして朝起きるとすぐにだった。
朝食を済ませて遂に沼地に来た、その沼地は結構な大きさがあり湖の様だった。どす黒い水面はヘドロの様であり不気味な泡がぶくぶくと浮いている。
その沼地を見てだ、久志は言った。
「こんな不健康な場所にいるなんてな」
「それこそですね」
「碌でもねえドラゴンだろ」
「私もそう思います、やはりです」
「ここにいるドラゴンはか」
「ブラックドラゴンでしょう」
沼地を巣とするこのドラゴンだろうというのだ。
「やはり」
「そっちのドラゴンか」
「そうかと」
「そのドラゴンも滅茶苦茶強いよな」
「成長しきっているなら」
つまり大人になった個体ならというのだ。
「相当にです」
「強いよな」
「どのドラゴンもですがブラックドラゴンです、しかも」
「しかも?」
「レッドドラゴンと並ぶ非常に狂暴な種類です」
ブラックドラゴンはというのだ。
「そうされています」
「ドラゴンごとで性格も違うか」
「はい、グリーンドラゴンやブルードラゴンはまだ温厚ですが」
「レッドドラゴンやブラックドラゴンはか」
「強さはプラチナドラゴンやゴールドドラゴンを別格として他のドラゴンの強さはおおむね同じです」
種類に関わらずというのだ。
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