第六話「退却戦」
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たちまち逃げ出した。
しかしそこを逃がす二人ではない。疾風のように走る二人を腰のクナイで二人とも討ち取る。
「クナイは、数に限りがある、大切に使いましょう」アルテルテは敵兵に刺さったクナイを抜いて血を
ぬぐい腰のホルスターに納めた。
「うむわしもそれにならおう。よし、ゆくぞ、迷いの森はすぐそこだ」
「サイモン、サイモンか?」
「ん、おお。バラム」
「イズウェル王がアルセイユ様を助けに行って戻らないのでな、アルセイユ様にイズウェルさまは?エ
レスティ様もどうした」
「ああ、盲目のおまえさんには見えぬか、木の上じゃ仕方なく、つるしておかれた」
「ん、おお、そうか、むん、はっ!」
鞘から抜き放たれた剣は、軽く地面をすばらしい脚力によって木の上のアルセイユに届く。アルセイ
ユを吊るしておいた枝をなんの抵抗もなく枝だけ斬って取った。そして着地と同時に血払いと納刀を
し、落ちてきたアルセイユをすかさず抱く。
「……お二方は、王子を残すために残ったわけですな?」
「悲しいかな、王子を残して討ち死にを」
「もう翡翠の国はだめだ。国民は散り散りになった。イズウェル王によって国の民は命こそ免れたがい
ろんな国に落ち延び隠れ潜む日々を送ることになろう」
「うむ、うむ」バラムはうなずく時、顎のひげをなでる癖がある。バラムの顎ひげは立派で胸を覆うほ
どもある。それでしかも長い心労ですっかり白くなっていまや賢者の様相である。
「まだ希望はある。お二方もアルセイユ様も健在なればいつの日か反旗をひるがえす日も近いだろう!
王が旗を掲げ国を立てたとき四散した民はまた一つになり翡翠の国は復活するのだ。そう、緑色の聖性
を帯びて!」
「さて、わしらはどうしよう」
「王子さまをお守りするしかないな、もうここから逃げるしかない。今はできるだけ遠くへ逃げるの
だ。この国には非常時の際の王族に伝わる隠し通路がある、けわしい道だが、知られていなければ山向
こうの町まで通じておる、こっちじゃ」
四人は森へ入るとそこには古い洞窟があっった雑草によって巧妙に隠されていてよくわからないが洞窟
は向こうへ通じているらしい。
「よし、よいか草一本切ってはならぬ、この森は古い。追手が来てもこの洞窟を見つけるのは困難だろ
う、そうっと入って静かに歩むのじゃ、ほれ、長い間枯れ草が積もって足跡を消してくれる。この古い
森は長い間、翡翠の国を守ってきたアルネルネの川の水によって魔法の力を持つようになった。森はも
う知っておる国が滅びて川には汚い油や鉄の匂いが混じって血が紅くアルネルネの川を濁らせていっ
る。森は今、密かに怒っている。たぶんこれから何千年も静かに暮らしていた
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