第64話<盆踊り会場>
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が合わせて踊って、自然に踊りの輪に加わっていた。
別の場所には手馴れた感じで自然に踊っている祥高さんと龍田さんが居た。
その輪から、さらに外側には青葉さんが居て撮影に専念していた。その横では浴衣を着た北上が踊らずに淡々と何か話しかけている。
「この二人は、何処に居ても行動パターンが変わらないな」
思わず苦笑した。
さらに、その反対側の人の輪には比叡と金剛。この二人は長身でスタイルも抜群だから浴衣を着ても妙に目立つ。
特に金剛は『盆踊り』というよりは『ダンス』である。さすが英国からの帰国子女らしくクラシックバレエみたいな洗練された踊りだった。
「Hey! テートクぅ」
暗くても索敵能力は高いぞ。正直、少々恥ずかしかったが……さすがは盆踊り会場はお祭りだ。意外に奇天烈なことをしても違和感がなかった。
「おう!」
いつもの私なら返さないだろう、ややオーバーな反応をして大きく手を振った。
彼女は、ニッと笑って輪に戻った。
「あぁ、お姉さま! 待って」
その隣の比叡は、もはや盆踊りなのかダンスなのか良く分からない状態だ。ありゃ和洋折衷的なタコ踊りっぽいグニャグニャ踊りだな。
そんな金剛姉妹は結果的に浮き気味だったが……まあ、良いか。皆、楽しそうだ。
私は背後の山城さんを思い出した。彼女は大丈夫か?
……でもそれは杞憂だった。
彼女は踊っている艦娘や群集を見て急に、そわそわし始めていた。
いつの間にか私の帯から手を離してモジモジしながら言った。
「あの司令、済みません。ちょっと踊って良いですか?」
「ああ。構わないよ」
彼女は軽く頭を下げるとウキウキしたような軽い足取りで輪に向かった。
(そうか山城さんも、こういう古風で伝統的なものが大好きなんだな……)
私は妙に納得した。
いつの間にか五月雨も浮き足立っていた。
彼女は踊りの輪の中に小学生の一群を見つけると「司令、私たちも行きますので!」と言った。
「ああ」
別に引き止める気はない。
彼女は、やや引き気味な寛代の手を握ると半ば強引に行ってしまった。
(へえ、五月雨も、こういうのが好きなんだな)
これまた意外で新しい発見だった。
両の手と、背中の艦娘が『出撃』してくれたので私はようやく『解放』された。
「やれやれ」
大きくため息をつきながら両手を上に伸ばした。
それから私は広場の端まで行くとベンチに腰をかけた。
「やっぱり艦娘は伝統的なものに自然に馴染むんだな」
もともと私も浴衣だから開放感はあるのだが、改めて夏らしさを感じるのだった。
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